お嬢さんと呼ぶ理由
お前の表情ひとつひとつに、すべてをかき乱されて。
でも、殻の中身の感情は本当。
「アルヴィン。」
「どうかしたのか?お嬢さん?」
一緒に旅をすることになったお嬢さん。名前はニコラ。
パーティの中でもよく一緒に居て、それなりの長い付き合いなのに、彼女に上手く話せない。
いや、“いつもの”会話なら問題はない。
「…えっとねー……。何でもない。」
「なんだそりゃ。」
「呼んでみただけだったりするのよね。」
へらっと笑っては俺に笑顔を向けた。
ニコラは本当にころころ表情を変えてて飽きないし、その表情ひとつひとつが愛おしくて。
傍にいて欲しいを常に思う。だが、それを素直に言い表せない。
頭ン中では、こんなに愛しいのに。今の俺では、本心で話すことが時々恐ろしく感じてしまう。
だから、こうやってココロに嘘をつく。ココロに嘘をついて、殻に閉じこもるような事をする。
肩を抱いて、華奢な身体をすっぽり収まるように。
(あー、まじいいわ。いい香りがふわりと香るし。)
「わわっ、どうし、たの…急に……?」
「んー?唯の、スキンシップ?」
「ふふ、何それ。」
同じように返してくすりと綺麗に笑う。
(あぁ、こんなにも愛おしい)
頼むから、そんな疑いひとつ無い目で見ないでくれ。
曝け出されそうで時々怖い。
でも、本当なら抱きしめてキスもして。
ニコラのすべてを貰いたいのに、一歩前に出れない。
(好きだ、と言えたら…言えるなら。)
「あ、あのさ…。」
「なに?」
どくん、どくんと鼓動の音がする。
童貞でもあるわけじゃないのに、なんて情けない。
困っている俺の顔を見ては、ニコラはそっと頬に手をあてる。
身長差は俺が屈んでいたから縮んではいるが、懸命に腕を伸ばす。
柔らかくてちっさい手が、俺を包んだ。
「アルヴィン、」
「?」
「言いたいことあったら言って?」
首をかしげてニコラは言う。『好きだ。』頭の中で何百回も唱えた。
なのに、それを音にしていえなくて。
でも、そんな綺麗に笑うニコラが愛おしくて。
葛藤した末に、俺はニコラに顔を見られないように強く抱きしめた。
「ちょ、何っ、アル、」
「す、好きだ……。」
これで崩れてもいい。ずっといえなかった言葉をニコラによって押せたのだから。
小さい声。 幸いこの場所に誰もいなかったから。
かすれたような小さい声は、ちゃんと聞こえた。
そのときにちらりと見えたのだけど、凄く照れたように言う彼がなんだか可愛く見えてしまって。
「ねぇ、アルヴィン。」
「っ、なんだ…?」
俺の名前を呼ぶ彼女の声が愛おしい。
彼女の俺に向けられる笑顔が愛らしい。
「名前、呼んで?」
「…!」
「さっきからお嬢さんって言ってるから。」
『ね?呼んで?』と見上げて言うニコラ。
じっと見続ける彼女が可愛らしいが、中々見れないし、名前で呼べない。
“お嬢さん”という三人称を用いるのも、その理由。
俺は、気付けば口にしない名前を口にした。
「…っ、…ニコラ……。」
「アルヴィン。大好きだよ。」
ちょっと背伸びして頬にキスをする。
その時アルヴィンの表情に頬を赤らめたのは、ちょっと意外だったけど。
そうしたら、タガが外れたのかお返しのキスが降ってきた事に驚いた。
お嬢さんと呼ぶ理由
(アルヴィンって、こういうの実は苦手?)
(違えよ。今まで本気で好きになるやつが…その…。)
(ふふっ、でも嬉しい。ぎゅっとして?)
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相互記念夢でした。