幼馴染みのお兄さん。
気づいたときには、私にとって当たり前のようになっていた。
私は家も近いし(というか、同じマンションだし)会おうと思えばいつでも会いに行けた。
そして今日も、簡単な梱包をされた箱を手に持って。
「お、ニコラか。来てたんだな。」
「こ、こんにちは。」
ユリウス兄さんとは小さい頃からの幼馴染。
といっても私の幼馴染は弟のルドガーくん。
だから、幼馴染のお兄さんといった関係。
にこりと穏やかな表情でわしゃわしゃっと大きな手に撫でられてはなんかドキドキしちゃう。
幼い頃からこの手に撫でられていたのだと思うと、尚更。
「お?今日も持ってきたのか?」
「…は、はい。」
私は時々彼らの家に遊びに来ては、こうして差し入れしてる。
主に持ってくるのはデザートだけど。
(だって、料理だと勝ち目ないんだもん。ルドガーくんに。)
アナタは置いておいたテーブルの差し入れを開けては覗き込む。
(反応してくれるから、嬉しくてついつい作ってしまうんだよね)
「今日はどんなかな…?ん、ゼリー…?」
「あ、はい…。普通に料理だとルドガーくんに勝てる気がしないから、新デザートの試作でもと……。」
これなら野菜とか苦手意識があっても食べられるし、野菜はなにも料理の専売特許ではない。
野菜そのものの甘さがあって素朴の味というものもあるし。
(試作であるが、勿論味見もしてる。)
こうした野菜を用いたデザートを作り始めたのは、
最初は私が野菜が苦手だったからと始めたが、どうしても食べてもらいたかった。
その理由が、勿論私の中で知ってはいるのだけど。
「トマトゼリーですから、冷やして食べてみてくださいね。」
「あ、ちょっとニコラ。」
「……?はい…?」
アナタの声で名前を呼ばれると、不意にドキっとしてしまう。
だけど、アナタは弟の幼馴染という目で見てるんでしょ?
だから私はアナタに思った事を少し隠しては反応を返す。
「最近はトマト使うデザートが多いよな、ニコラは。」
「あ…、はい……。まだ食べるのは苦手なので、克服にと始めたのですけど……。」
「で、今はどうなんだ?」
テーブルに座って頬杖するなんて、絵になるなぁとか思いながら目線を少し逸らす。
あの優しい目に見つめられてると思うだけで、ドキドキしちゃう。
「生のままはまだ苦手ですけど…ある程度は克服しました。」
生のまま丸かじりは今でも出来ないけど、加工をしては味見を繰り返していくうちに慣れてきた。
昔はこれでも、全然食べれなかったのだから。
多分これは年齢も重なったからなんだろうって思うんだけど。
「じゃあ…。ニコラ。」
「…?はい……っ、わわ…っ!ちょ……!」
掴まれた腕をぐいっと引っ張られては距離を縮まれる。
私とアナタでは身長差もあるから近くで見る形なるとすごく近く感じちゃう。
もう、ドキドキと心臓の鼓動が先程より煩い。
「今度、生の方も克服出来るようにしてみるか。」
「…え…、え?あ、あの…ユリウス兄さん…?」
「いつも俺に合わせて差し入れしてくれてるしな。たまにはいいだろ?」
いつもつけている眼鏡を外して眼鏡拭きで拭きつつも、
こちらを見つめてはニヤリと意地の悪い笑みを浮かべてた。
幼馴染のお兄さんは、こんなに意地悪だったのです。
お返しは弱点克服!?
(懐かしいな、ニコラは昔っから野菜苦手だったもんな。)
(そんな昔の話を…それに今はほとんど直ってます。)