当たり前のような日常が、少しずつ変わっていく。
ゆっくりと静かに、水面下に。
「…なんか、日課になってるなぁ…。」
ひとりごちりながら、自室で新作のデザートの試作に励む。
あれでもないこれでもないと、繰り返しながら味見も勿論の事繰り返す。
こんなことしてるから、加工された野菜が大分克服されたのだけど。
「ん…、これじゃ…ちょっと、甘い…かな…。」
余り甘すぎないように、加糖しすぎず素材の味を使う。
ちゃんと熟されたものだったら、変に加糖しなくても素材そのものに甘みはあるのだ。
というより、ここまで相手を想って作るなんて、私もおかしい。
最初は食べてもらいたくて始めたのに、今ではどんな反応をするのかなんて先まで考えてる。
とかとか、考えてるとまたもや訪ねては渡していた私がいた。
だって、目を閉じればいつも渡すと嬉しそうに笑うアナタがいるから。
「はい、コレ。今日はトリュフにしてみました。」
「いつも悪いな、ニコラ。」
「気にしないで下さい。」
悪いななんていいつつも嬉しそうにするから、頷いてしまう。
ちゃんと渡した後日に会えばデザートの感想を言うし、ついつい頑張っちゃう。
どれもこれも、アナタに喜んで欲しいと思うから、なんです。
でも、そんなことを思っても口にはとても言えないから。
じゃあ、またと帰ろうとすると翻す途端にアナタが声をかけてくる。
「なぁ、ニコラ。」
「…あ…、は、はい……?」
声をかけられて、振り向きながらもアナタに視線を向ける。
何故か私の肩にぽんと手を置かれて告げられた。
「今度、俺のとこで作ってくれるか?」
「……え…?」
「な?たまにはいいだろ?必要な物も揃ってると思うし。」
それも、唐突に。
アナタの言葉に目をぱちくりするばかりだった。
つまりは、アナタの…ユリウス兄さんの家で直接作るということになる。
確かに基本の調理道具があれば簡単なものは作れる、けど……。
結論をいってしまえば、余りに唐突過ぎて驚いてしまったのだ。
「ユリウス兄さん…ちょっと、唐突すぎますよ…?」
「ん?あぁ、そうだったな。勿論ニコラの大丈夫なときでいい。」
さらりと言ってのけるアナタが、本当にズルい。
私はアナタの言葉ひとつひとつに振り回される。
ドキドキと平常音から離れて鼓動がとても煩い。
だから、こくりと小さく頷いてしまって了解してしまう。
「…あ。私で、よかったら……。」
「ん、じゃあ。行こうか。」
「……え?ど、どこ……に?」
にこりと笑みを浮かべては、腕を捕まれてそのまま部屋を後にする。
行き先も何も言われてないのに、話が知らないうちに進んでく。
(え?…え?…なんで、こうなった……?)
「これから買出しに。」
「え?今から、ですか……?」
優しい笑みで肯定するユリウス兄さん。
そして、掴まれている腕にドキりと鼓動がまた鳴る。
(いや、確かに今だったら特に予定も無いから出来なくはないけど……でも!)
物心がついていた時には、既に当たり前のようにいた幼馴染でお兄さんで。
そして月日が流れていたときには、ただの幼馴染のお兄さんという意識で見れなくなって居たのを隠したのに。
どうして、こうもグラグラとしてしまうのだろう。
(あぁ、もう恥ずかしすぎて本人の顔とか見れない…!)
「あ、あ、あの…っ、ユリウス兄さん…っ!」
「本当に懐かしいよな、こうしてよく一緒に出かけてたっけな。」
手袋越しに握られてはアナタのぬくもりがじんわりと伝わってく。
これが、無意識でやっているなら、なんてズルイ人なんだ。
握られた手のぬくもりに
(ユリウス兄さん……ズルイ、です……。)
(ん?どうした?ニコラ。顔が随分赤いようだが?)