これは、とある日常である。
いつものように旅をして、いつものように戦闘を重ねて、いつものように……。
「ほんと、好きよね……。心水。」
「ん?」
心水が好きと豪語する一風変わった服を纏う男。
一目見ただけで、異国の人間だとわかるその姿。
そして、一目見ただけでただの人間ではないとわかる異様な姿。
私も何故この男と一緒にいるのかさっぱりだ。
というより、私が成り行きで一緒にいるのかもさっぱりだ。
そもそもの経緯もよくわからず、成り行きでということになっている。
まぁ、私も世界が穏やかになればそれはそれでいいのだが、如何せん私のような変わり者には居づらいのは事実だ。
そもそも、私のような異端者にとっては、この一派と一緒に居た方がいくらか心は穏やかなのである。
「お前も飲むか?」
「え、いいの?」
「いいってことよ。いつも世話になってる礼だ。」
へらり、と飄々とした男は一風変わった器を持ち上げ、こちらに注いでくれた。
(後に聞いた話だがこれは御酌してくれたらしい。)
世話になった礼だと彼は言うが、私はお世話したと言う認識はそこまでないし、
むしろずっと助けてくれたような気さえする。
しかし、せっかくなので。お言葉に甘えていただいた。……のは、よかった。
だが…そこから、状況が変わったのは想像にたやすく早かった。
「ぅー……。」
「おいおい、大丈夫か?」
「だいじょ、ぶ……。」
しくじった。失敗だ。いや、予想外だった。
私だって心水は飲む。
飲んでても普段は酔ったこともなかったし、ましてや呂律が回らないほど潰れたことなんてなかった。
油断した。まさか、たった数口でこんなに圧縮されたかのように濃度が濃かったなんて。
(うわ…しくじった、何でこんなにキツいとは思わなかった。)
まったく飲めなかったわけじゃなかったけど、ロクロウが愛飲する心水がこんな強いとは思わなかった…。
「部屋に戻るか?」
「ぅー…、戻る……。」
(そんなことをいっても、泥酔したわけじゃないのに足元はフラフラだし上手く頭が回らない…。)
喋るのがやっとだ。
ハッキリ言えば、自力で戻るのは少々厳しい。
でも、普段からできることは自分でやってきたために今更頼むのも申し訳ない。
ましてや、自分から言いだしたのに潰れたなんて、とてもじゃないがからかいの対象になってしまう。
そんなこんなであれこれ考えていると、ふと状況が変わった。
「ふぇ?」
背中を優しく撫でていた手の感覚がなくなって、気づけばひょいと抱えられた。
足に腕を差し込まれ、背中にたくましい腕が当たってる。
つまり、簡単に言えばお姫様抱っこ状態である。
「え、ちょ、なんで…!」
「ん?動けないんだろ?部屋まで運んでやる。」
さも、当たり前のように。しれっと目の前の男は姫抱っこをしてきた。
いやいや!それは嬉しいんだけど!むしろ助かるんだけど!!
ちょ、っと…なんで、なんでこんな状態になってるの?
「え、っと…その…運んで、くれるのは…助かるんだけど……。」
「いいからいいから、俺に任せておけよ。な?」
へらりと柔らかく笑う。一度言いだしたらその決断を揺るがせない。
ロクロウは何気なく頑固だよな、なんてぼんやりと考えた。
「……わかったよ。ベッドの上で横にさせればいいから。あとは、よろしく。」
「応、まかせておけ。」
その安心しきった笑みと、しっかりした腕の力に抱かれるように、私はなすがままにされてしまっていた。
分厚い異国の衣装でぬくもりは鈍いままだったけど、すごくすごく暖かい気がした。
人間だったころの感覚はほとんどない、って言ってたけど、それすら錯覚させてしまうななんて思えてしまう。
……しかし。
このあと、まさか翌朝にベッドにもう一人忍び込んでいたとは この時は何も知らなかった。
しくじった夜
(ちょ、な、なんで……!!い、い、一緒に…!!)
(ん?ちょっと俺も酔いが回ったからな?でも、よく眠れただろう?)
(ば、ばかぁああああ!!!)