3つの理由
私は、理性的だとよく言われる。
(理屈っぽいと言うか、屁理屈だけども。)
でも、本能の部分だってちゃんと働いてる。
生きるために大事なこと、寝ること食べること。これは生きるための最低限のライン。
それとは別に、忘れてはならない本能もある。
それは、生物が命の危機にさらされる瞬間に起きる危機察知の本能だ。
この本能はとても構造としても仕組みとしてもシンプルな、生きている者には誰しも持っている強い本能である。
ましてや、生に執着ししがみつくものほど、手放す危険性に対してのアンテナは凄まじいものである。
「なぁ。いきなりで悪いんだが、宿屋に戻ったら手合わせしようぜ?」
「断る。私は付き合うつもりないし、あと近づくな。」
なんで、コイツと当番なんだ…!とぎりりと悔しく事の数十分前を思いだす。
古典も古典、ジャンケンなんぞで負けたために組むことになるなんて…不覚!
(あーあ、当番だったら女の子かライフィセットが一緒がよかったよ…。)
「つれねぇな、相変わらず。」
「それ以上近づくとボディーブローいれるけど、それでもよければ。」
「おいおい、それは勘弁してくれよ…。」
軽くあしらって、頼まれた道具の買い出しをあとはとった宿屋まで行けば当番は終わりだ。
ここまでは、何も問題はない。なにも。
この男、右目に業魔の目を宿すこの男・ロクロウは、一言で言えば……すごく苦手だ。
理由は様々ある。
まず、第一に私が男が嫌い。
できることなら、半径のレベルで近づいて欲しくないほどだ。
(まぁ、ライフィセットは例外で、アイゼンは見た目が滅茶苦茶怖いけど、悪いやつでないのは重々承知だ。)
第二の理由、業魔だから。
いや、これは同じ業魔であるベルベットが一緒にいるけど、彼女は別だ。
(まぁ……いわば、強烈なツンデレのようなクーデレの要素もあるんだけど…。それは彼女なので問題ない。)
あと、もうひとつの理由もある。
「…っ、さっさと終わらせて戻るよ。」
「まぁまぁ、ツレないこというなって、な?」
「!!」
気づくのが少し送れた、街の建物の隙間…即ち路地裏に入りこんでしまったのだ。
よりにもよって、腕を引っ張られてしまっては壁に背中を推しつけるような状態で。
「っ、ちょ……ふざけないで…っ!」
「ふざけてなんてないさ、何でお前は俺を避けたがる?」
「!?」
一瞬、すさまじい悪寒を感じた。
彼はどちらかと言えば、一般論だとすごくいいやつなんだ。
親身的に話を聞いたりするし、冷たいどころかフレンドリーだし。
あからさまな“危険”はない。そう、感じるんだ。
だけど、そこに、大きな違和感を感じるんだ。
その違和感は、小さく、音を立てずに、足元からずるりと忍び込む。
彼と接するときに感じる違和感には、初めて会ったころから気づいていたのに、気づけば足元ごと持っていかれる。こんな風に。
「…っ、別に…男が嫌いなだけよ。」
男が嫌いなのは嘘ではない。
だが、正確にはこの男の質問の答えにはなっていない。
今でも薄々感じるのだが、一番この男を嫌悪する理由が戦闘の時。
共闘をしているはずなのに、まるですべてを奪うかのような突き刺さる気配を感じるのだ。
業魔としての本性をむき出しにしているあの感覚が、私には危険と警鐘を鳴らすのだ。
それに似たような危険は、“あのこと”を思い出させる。
第三の理由、それは即ち。漠然とした恐怖だ。
「ふーん、お前。男が嫌いっていってるけど、本当にそれだけか?」
「!!」
「……ま、いいけどよ。」
深追いされた?それともバレた??
これ以上聞かれてしまうと揺れてしまう、揺れてしまうのを必死に堪える。
微かに震えてしまったのを見計らっては、すぐに解放された。
私に、不安と言うしこりを残させたが。
堪える代わりに、追い詰めたその代償として。
思いっきり、みぞおちにボディーブローを噛ましてやりました。
3つの理由
(ベルベットぉぉお…!!)
(ちょ!どうしたのよ、…って、なんでアンタが痛がってるの。)
(ぐぅ……っ、ち、ちょっとな……。)