偶然、というなら偶然なんだろうけど。
これを奇跡、と捉えてもいいよね?
「なぁ、そこのお嬢さん。何かお困りかい?」
「…はい?…誰、ですか?」
名も知らない男に話し掛けられて、そちらに向ける。
その男は身長は高く、そこそこイケメンの類の方だ。
ナンパなのか?と疑問に思い、無視してもよかったのだが取り敢えず返答する事にした。
(いや、つい反射で反応してしまったのだが)
「あ、俺は傭兵ね。報酬を頂くが困ってる人を助けるぜ?」
「あぁー…それ、じゃあ…。」
ちらり、と視線をずらし自分を追っている魔物に向けた。
先程から応戦はしているのだが、中々倒れずに困っているといえば困っていた。
「目の前のご一緒に倒してくれません?一人だと結構つらいのよ。」
「…だな。」
彼女は自分の荷物を置き、術を纏わせ構えた。
声を掛けてくれた男は手馴れているのか、大剣を振り下ろし向かう。
途中からの参戦者のおかげで、すんなり片付いた。
置いた荷物を軽く埃を払い、持ってはくるりと回り笑みを浮かべた。
「ふぅ。助かったわ。ありがと。お礼にこの先の街でお茶してかない?勿論私の奢り。」
「お。そりゃいいねぇ。」
笑みを浮かべて私の案に男が乗ると、このまま歩を進めていく。
結局途中の魔物も二人でこなして無事に到着し、宿屋を取って食事を利用する。
勿論、助けてもらったお礼で私の奢りだ。
「お嬢さんは何かしているのか?」
「ううん。強いて言うなら流浪の旅人?」
『何でハテナなんだ。』と突っ込まれる。
何もしてない、というのも。旅人、というのもどちらも本当だ。
唯、“目的”が無いだけなのだが。
「なぁ。俺を雇ってみない?安くするぜ?」
「……そう、だね…。お兄さん中々強いし。」
『ひとりで夜道を歩く時には助かるかも』とひとりごちる。
急な助っ人をお願いしたけど、そのときの手際の良さにも驚いたし。
この後報酬の料金だとか色々交渉した後、
今まで一人旅立ったため払うほど持っていなかったことが判明したので稼ぎつつ旅をすることになった。
「そういやお嬢さん。名前は?」
「私?ニコラ。ニコラ・ノールっていうの。」
「俺はアルヴィンな。」
よろしく、と手袋越しの握手。
偶然といえば、偶然なんだろうけど。
奇跡といえば、奇跡にも値する。
流浪契約
(おたくは精霊術を使えるのか?)
(まぁね。でも戦いは好きじゃないのよ。旅したいだけだってなのに。)
(変わった子だな。)