酔狂者は日常を嫌う

日常を酷く嫌う。
いや、嫌うというよりは好ましくない。

それが、酔狂だと云われるようなことでも。



街に無事に辿り着けたとはいえ、困った事がひとつ。

ニコラは手持ちのガルドを数え、頭を抱えた。
それを、横で傍観するアルヴィン。



「ひぃ、ふぅ、みぃ、っと…。ちょっと厳しいわねー…。」
「ちょいと削らねぇと厳しいかい?」

「んー…此処の宿代さえ安くなれば…。アイテムも厳しいから補充したいんだけどね…。」



食事を取れたのはいいが、問題は宿だ。
雇った彼・アルヴィンに支払いを少しずつ払っているために、元々少ない手持ちが更に減り、
それにトドメを刺すかのように、アイテムの補充が必要なぐらいにまで減ってしまったのだ。

アイテムはギリギリの量で行っているが、それを行えば代わりに宿が二つ分取れなくなってしまうのだ。



「わざわざ二部屋なんて取る必要ねぇだろ?」
「それはダメ。男と女が同じ部屋でなんて許されないよ。恋人でもなければね。」



意外にも…というか、独り身で旅をしていたからかこういったことには敏感だ。
確かに最悪なケースで野宿もこなす事はあるが、それ以外…例えば街とか。

宿を誰かと取るにしても、同性なら問題はない。だが、異性となれば話は別だ。
唯の旅人依頼人である私と、傭兵の彼とでは、同じ部屋になど有り得ない。



「ならコイビトにでもなってみるかい?」
「そんな気なんて無いくせに。いやよ、イヤ。」



絶対多くの女性と付き合いのある彼だろう。
今はひとりではあるものの、そんな彼と部屋を共にするなんて冗談じゃない。

朝起きたら覚えも無く裸になっていた、なんてケースだけは避けなくてはならない。
(そうなるなら、部屋から追い出して鍵をかけてやる…!)



「なぁ、おたくって物好きだよなぁ。」
「…何をいきなり言うんですか。」



どうやったら、この質問が来るんだ。とルア自身そう思う。
いきなり会って成り行きで一緒に旅をして。

それをどうこうすれば、物好きに発展するのだ。



「誰とも組まない独り身のお嬢さんが旅なんてするかねぇ。」

「…悪いですか?ただ目的無いまま気まぐれに立てたんです。」
「そりゃ、また。」



『物好きにあてはまるな』とひとりごちる。

確かに私自身が目的も無いままに旅をするなんて余程の酔狂者だろう。
しかし、逆だ。

面白味も感じない日常を打破したくて、酔狂者を選んだのだ。



「それに…今はアナタがいる。それじゃダメですか?」
「俺は報酬を貰えれば何処へなりとも。」



ニッと笑う彼。
彼もまた、こんな私に付き合うのだからそれも酔狂者とは言えるだろう。

また、稼がなければ。とぼぉっと思いながら、宿屋を取りに向かう。
これも、非日常と日常を繋げ、日々を過ごすための線路だということを。






酔狂者は日常を嫌う
(え…、今。部屋ひとつしか空いていないんですか…?)
(別に足りるだろ?俺とお嬢さんが一緒の部屋ってことで。)
(ぜぜ、絶対イヤですってば!!)