Timelimit?
元旅客船のこの場所で、たまに任務の真似事をして出たりするがひょっこりとこの場所に帰ってくる。
本来の一員なら、命令違反で殺されちゃうんじゃないかと思われるが、
今のところ奇跡でこの世界で息をしている。だから…大丈夫だと思う。
でも、あの人のことだから多分放っとけみたいなことだろうが、
見捨ててはいないと思ってる…。いや、思いたいだ。
だが、今回も同じようにひょっこり戻ってみると、
この廊下は豪華客船なのに人が少ない所為か凄く冷えていた。
「…寒。」
現在薄手の格好でうろついていたから、やっぱり寒さは際立つ。
いや、凍えそうなところまで至ってないのが唯一の幸いか。
ぽつりとひとりごちていると、後ろから声がする。
「寒いなら何か着ろ。」
「あ…ジランドさん。」
カツカツと歩く音が聞こえて、後ろから声を掛けてくれたのは恩人のジランドさん。
そして、この場所にいられる大きな理由が彼なのであるがその話は後々に。
今は、ぬくもりが余りない冷え切った寒さが体中を襲う。
涼しい程度なんだろうけど、今は夜になっているからか、いつもの日以上に寒かった。
「結構ここって冷えるんですね。着てくればよかった。」
自分自身の腕を摩りながらあははと軽く笑うが、彼はこっちをロクに見ない。
いや、それこそ彼なのだが。
あとで、部屋に戻ってちゃんと着よう、とか。
そんなことを横で思ってると、ばさっと無造作に何かが背中に落ちてくる。
落ちてきたものが、実は彼が着ていた上着だと気付く。
「ったく、ガキが…。」
「あ…、有難う、ございます…。」
貸してくれた上着をぎゅっと握ってみる。
そんなに厚手でもないのに、生地がしっかりしていて肌触りもいいし、思ったより重くなくてとても心地よかった。
本来なら、この状況だとお礼といわなければならないんだけど。
ひとつ、気にかかったことがある。
「あ、あの…。ジランドさん。」
「あぁ?」
なんで毎回こう不機嫌MAXなんだろうとか思う。
(多分どこかで鬼畜だとか言われてるよ、きっと。)
こんな中で、ひっかかりを敢えて言う私も私だが。
「私これでも成人しているので、ガキと云う言葉は不相応だと思うのでけど…。」
そう。これでも世間じゃ大人の仲間入りしてもおかしくない。
煙草は煙がキライだから吸わないけど、お酒はそれなりに飲める。
たが、結構弱いので飲んだ後の記憶がないのが殆どだ。
「そうだったか?なら大人なりの振る舞いでも学んでおけ。」
「む…。」
ニコラの必死の説得は意味を為さず、ハン、と鼻で笑ってはくるりと翻す。
彼・ジランドの立ち姿勢はやっぱり綺麗だな、優雅だなとか思ってしまうのですよ。
多分これは、親愛か尊敬の意味もあってだろうが。
「い、いつか認められるような大人になりますからね!」
「くくく、大人は自分で大人と言わねぇぜ?」
確かにと、冷静な頭ならそう言うだろう。
だが今のニコラはそれに反論する言葉が見つからない。
多分、この冷徹で鬼畜なジランド様のことだから一反論につき十の反撃が返ってくるだろうし。
その辺りは容赦はない。そう、思っていたのだけど。
「まぁ、」
「?」
首を傾げて視線をジランドさんに移していると、どこか面白がるような笑みを浮かべて。
「てめぇなら待ってやるがな?」
不敵な笑みを浮かべる彼が、とても不思議と不安に覆われた。
(それは、期待していると捉えてもいいの?)
でも彼のことだから、タイムリミットはあるんでしょうか。
(いや、無いかもしれない…。その辺りは全く判らないんです!)
Timelimit?
(ジランドさん。あの…何か、企んでません?)
(あ?そんなにやって欲しいのか?ニコラ。)
(い!いやいやとんでもないです!)