これぞ試練の時
何回も、何回も、銃声が鳴る。
銃声が響く一室で、ため息がひとつ。
「うーむ…、ブレるな…。」
ため息をついた人はニコラだった。
それをついた理由が、手に持っている銃と目の前のターゲットだ。
ココは訓練場で、ニコラは丁度銃の練習をしていたところだ。
ニコラは銃を扱うのが苦手で、よく外す。
それは本人にも自覚はしているのだが、それを何とかして克服しようと時間があるときは大体この場にいる。
「何やってんだ。」
「…あ、ジランドさん…。」
暫く銃声の音かため息の音しかしなかったため、別の声がするとすればココにいる人間。
そして、この声は聞きなれた声である彼だった。
「いや、今の時間暇なので折角だから苦手克服しようかと。」
苦手克服と告げると、ジランドさんはため息を軽くつく。
彼女が持っている銃は、掌に乗せられるサイズである。
ジランドさんの持っている銃は大型だけど、ブレひとつなく狂いなく撃てる。
だからだろうか。ため息ついたのは。
「ンなモンも扱えねぇのか。」
「苦手なんですよ。護身用にと持ってはいますけど、当たらないし…。」
銃なんて本当に使う回数は少ない。
ましてやそのテの人間ではないので、素人同然なのだ。
「そんなんじゃ弾の無駄遣いだな。」
「判ってます。だから克服しようとやってるのですけど…。」
一応自分の中で克服心はあるのだけは認めて欲しいなと思ってしまう。
時間があるときは大体ココに居たりする。
でも、まさかジランドさんがこの場所に来るなんて思わなかった、というのが本音だ。
そんな中で、ジランドさんが一言。
「撃ってみろ。」
「…はい?」
「どれだけ下手なのか見てやる。」
下手とは言い過ぎだろう、とか内心で思うけど。
言われたので銃を手に持ち、銃に弾を充填し、構えては何回か撃つ。
だけど、ブレが原因で最初に構えた場所と撃った場所が違う。
撃ち終えれば、ちらりと見る。
今の惨敗さを目の当たりにしてしまったので、恐る恐る振り返って。
「……こんな感じです。」
「このままやっても当たるモンも当たんねぇ。」
罵るだけ罵る、この鬼畜様。
いや、彼は大きなショットガンでもブレることなく撃ててるし、
火力だけでも精密さでも見ても、勝てる要素なんてひとつもない。
更に沈んでいると、ひんやりとしたものが手に触れる。
びくりと思わず身構えると後ろに人。
それが誰かなんて、聞くこともない。
先程までダメだしを出していた、ジランドさんなのだから。
「!」
「腕に余計な力が入りすぎてんだ。こんなにはいらねぇ。
あと身体を変に固めすぎだ。このままだと反動でブレるぞ。」
あれだけヒドイことを言っておきながらも、ずかずかと指導する姿勢は矢張り温かみがある。
だけど、彼の手が少しひんやりとしてたのが気になって彼の指導が余り耳に入らなくて。
折角、教えてくれるのに近くにジランドさんがいるからそっちが気になってしまう。
(と、いうか距離が近いし!)
「おい、ニコラ。」
「!は、はは…はい?!」
「ちゃんと聞いてんのか?」
その意地悪…、否、鬼畜な低い声でずしりと言われる。名前を呼ばれるだけでも変に意識をしてしまう。
そんな中でドキドキが止まなくて、必死に抑えながら平常心を装う。
(というか!平常心を装ってもバレるだろうだけど!)
「も、勿論ですよ…だ、だだ、大丈夫です…。」
「フン、ならやってみろよ。」
『しくじったら罰を与えてやる。』と続けられ、
ぴたりと固まってしまい、ド緊張の中の試験だった。
これぞ試練の時
(くくく、一発外したな?)
(か…勘弁してください…!)
(言った筈だ。“しくじったら罰を与えてやる”と。)
(や…っ、きゃー!!)