御日和も良い、開盟学園。…の屋上。
本来ならば授業で静まり返っているはずなのに、何故か人影。
階段を上ってきたのは現生徒会長の安形惣司郎だ。
しかし、屋上には既に別の人影があった。
ひとりの女生徒だ。
黒髪は長いのだろうかひとつに結っており、少々小柄。
鞄を枕代わりにしてすやすやと眠っていた。
スカートやワイシャツはこれといって校則には違反はしてない。
これで授業態度が良ければ第一印象は優等生だ。
眠っている女生徒を、安形は見覚えがあった。
「確か2年の…なまえか。」
2年生のみょうじなまえ。成績優秀でありながらサボりの常習犯。
一ヶ月に十数日しか授業に出ず、出る授業は大体気紛れ。
殆どは屋上で眠っている生活をする。
生徒会執行部でも違反者としてはちょくちょく上がっていた名前だ。
副会長である椿に捕まっては説教や始末書を書いているものの、それが直ることはない。
だからこうして堂々とサボっては屋上で眠っているのだが。
呼び出しもたまにあるぐらいで、その時に時々見かけていた人物だった。
「…んー…ふあ…。よく寝た。」
「朝から堂々とサボりか。みょうじ。」
「んぁ?」
なまえは欠伸をかきながら目をゴシゴシと擦り、声のした方を向く。
眠っていて朧気な視界がゆっくりと鮮明になっていく。
なまえはぱちぱちと見たが見たことのない男だった。
クラスメイトでもないだろうし、同級生でもいない。だとしたら、先輩だろうか。
「お?もしかして知らなかったり?」
「え、まぁ…その…。」
最初は唯のサボり仲間なのかと思っていたが、意識も徐々に覚醒したこともあり、冷静に考える。
普段ならユルユルとなれる私が、今はそれにはなれなかった。
ぞわり、となまえの身体を支配する何かがあるのだ。
何とも言えない、違和感。
他の生徒たちにはなくて、この男にはある、違和感。
そして、重い威圧感。
……!
「…腕章…生徒会…!」
「かっかっか。やっと気付いたか?」
相手が生徒会の人間だとわかると、なまえの目が変わる。
恐怖というより、警戒の目。
再三説教始末書は慣れっこのなまえであったが、それは決まって副会長の方だった。
耐性というわけではないが、慣れというものは恐ろしいのもあって。
しかし、この男とは接触は初めてだったし、何より副会長とは違う何かを感じだからだ。
「!ちょ、ちょっと…!近い、です…。」
「んー?そうかなぁ?」
じりじりと下がるものの、じりじりと近づいていく。
やがて背中に冷たいものを感じた。
冷たくて金属のようなものを…金属?
「!」
「かっかっか。捕まえた。」
正面には先輩らしき男。そして後ろにはフェンス。
脇から逃げられないように顔の横に手を伸ばして更に男は距離を縮めた。
男は嬉しそうな笑みを浮かべているが、何故こうなったかわからない。
どくんどくんと変に鼓動が鳴る。
これは恐怖なのかすらも解らなくなって。
「あ、あの、その…離れて、貰えませんか?」
「それは無理な相談だな。」
「えっ…!」
ニヤリと笑みを浮かべる男に顎を掴まれ、思わず視線がばちりを当たる。当たった眼差しはあっけらかんとしているのに、何処か危うさを本能的に感じた。
危険だ。目線を反らさないと危険。そんな気がして。
「んっ…!?」
気付いた時には口付けされていた。もう手遅れだったのかもしれない。
逃れきれなくて、そのまま受け入れてしまう。
「ふ、んんぅ…?!」
「はっ…。」
無理矢理唇をこじ開けて、舌がぬるりと侵入してきた。
初めてなキスなのに、こうも荒っぽい口付けに顔を真っ赤にしていく。
解放されないままの状態に先程の鼓動が更に激しくなっていった。
恥ずかしさのあまりにそのまま消えれそう。
ようやく解放され、奪われた酸素を何とか取り込もうと息を繰り返す。
それでも力は入らず、そのままぺたりと座りこんだ。
「俺、安形ってんだ。よろしくな?みょうじなまえ。」
安形惣司郎。別名、置き物生徒会長。
まさかのファースト・キスの相手が、この男である。
1st・kiss
(…な、なな…何、して…?!)
(ん?もしや初めてだった?)
(初対面早々なに人のファーストキス奪ってるのよ!)
(おっと、暴力は反則だろ?)
(乙女のファーストキス奪って何言ってるのよ!)