初めてを奪われた。
いや、純潔じゃなくてキスを。
最悪の出会いはサボりのお決まりの場所である屋上。
今日もお日柄は良い筈なのに、彼女の心の中は雨にでも降られたようなものだった。
通り雨のような一瞬だけど、強い雨にでも濡れたものだった。
「よぉ、また会ったな。なまえ。」
「‥名前で呼ばないで下さいますか?」
キッと、強く睨むなまえ。
飛んでもない男に目を付けられてから、早くも三日。
その男の名前は安形惣司郎。現生徒会長。別名置き物生徒会長。
学校でそう呼ばれているが、不意に覗く危険を孕む瞳と空気が私は苦手だった。
それだけではない。この男には、ファーストキスを奪われた。三日前に。
追い込んだと思いきや、どさくさに紛れて淫猥間近の口付けを食らった。
よもや、なまえからすればセクハラとでも言えるぐらいの被害だ。
「かっかっか。相変わらず堅ったいなぁ。」
「堅いワケではないです。あんなことをしておいて…!」
そうやってヘラヘラ笑っている男。
そんな男にファーストキスを奪われたなんて、屈辱過ぎる屈辱だ。
男の子からすればそうでもないだろうけど、女の子にとってのファーストキスは大事なものなんだよ!
「私はアナタのしたことは許しませんからね!」
「まぁまぁ。減るモンじゃねぇだろ?」
「私の中では確実に減っているんですよ!」
あくまでやや丁寧な言葉を用いながらもトゲのある言葉。
こうでもしなければ動かないと踏んだからだ。
言うだけ言えば、あとは目を反らす。
否、反らさなくてはいけない。
理由は、そう。苦手なものだから。
「気にするなよ、な?ちゃんとこっち見ろって。」
人の意向など虚しく消し去り、ぐいっと寄せられる。
本来なら抗いたい。
男女の絶対的な差もあり、ガタいもある彼だから離れるに離れることは出来ない。
また、かちりと視線がぶつかるとまた鼓動がひとつ大きくなって揺れる。
三日前の事件がなまえの中でデジャヴする。
「…なんで…。」
「ん?」
「何で…私なの。女の子とキスしたいなら他の子でも良いじゃない!」
キスした理由。それが未だに解らない。
彼女は単に生徒会が大嫌いで、敵意を向けていた。
だが、彼は私が誰だかをわかった上でキスをした。
キスの理由が、ただの女誑しの類いなら殴りたい。
それを読んでかこの男はフッと柔らかい爽やかな笑顔を浮かべてから。
「…そんなの決まってるだろ?」
「え…ッ?ちょ、ちょっと!」
なまえの反撃もないまま、再び重なる口づけ。
一方的な事に変わりはないが、最初の刺激的なファーストキスと違い甘く優しい。
そっと離してこの男、安形惣司郎は彼女とは5センチの距離でこういってきた。
「なまえが好きだからに決まってるだろ?」
「…はい?」
意外すぎる男の意外すぎるに発言によって、意外な結末を迎えたなまえだった。
2nd・kiss
(ふ、ファーストに続いて…セカンドキスまで…!)
(かっかっか。なまえにはたっぷり教えなきゃならんことが出来たからな。)
(結構よ!この変態!)
(益々燃えてくるねぇ。楽しみ甲斐がありそうだ。)