心では、ちゃんと好きだって何度も何度も伝えている。
だがそれを本人の前でちゃんと表現できているか、と言われれば話は別である。
「ん?淋…?」
「すぅ……すぅ…。」
よく晴れた日。詰所にて。来客が来ていた。
たが、その当人が眠っているのはいかがなものなのか。
来客・陽は心地よさそうに壁に寄りかかって眠っていた、
訪ねてからそんなに時間が経っていないことは聞いていたが、
日頃の仕事の疲れがたまっていたのか、安らかなほどに微笑んで眠っていた。
流石にそのまま放置するわけにもいかない、と掛物をもって淋の元による。
「ンなとこで寝てると、風邪を、」
「……こん、ろ……さん……。」
持っていた手をを思わず離しそうになる。
それほどにまで、紺炉にとっては衝撃的であった。
たかが名前を呼ばれた。それも夢の中で、だとは思うだろう。
いつもいつも口を開くと名前をなかなか呼ばない女。
理由は、好意が強すぎるからゆえに呼べないと中々難儀な理由ではある。
そんな彼女が、夢の中ではまさに呼んでほしい名前を呼ぶ。
その瞬間を思わず目撃すると、思わず生唾を飲んだ。
「本当に、敵わねェな。お前さんには。」
眠る相手に向かい呟いた。ふと我に返り、あなたに毛布をかけてやれば優しく頭を撫でる。
一人無防備を晒すあなたに思わず良からぬことをよぎったことを知らずに。
当の本人は微笑んで夢心地であったが。
それから、半刻過ぎた頃。
「……ん…?」
ゆっくりと瞼を開けると、目の前は見慣れた視界があった。
なんでここにいるんだろうか、と思い出す。
……確か紺炉さんを待ってる間に眠ってしまったのか。
もう恋仲の関係はほぼ周知の事実になり、彼を訪ねたら上がって待つように告げられ、
お言葉に甘えて上がって待っていたら、いつの間にか眠っていたらしい。
仕事の時間を中抜けしてたとはいえ、仕事に戻らないとと軽く体を伸ばす。
その時にふと、ぼやけていた視界がさらに広がってふとある違和感に気づく。
「……?………!!!?」
「起きたか?陽。」
私の重心を無意識で直す数分前。傾いていた先に彼がいた。
単刀直入にいえば、紺炉さんの肩に寄りかかって寝ていたことである。
「え、えっと………。相模屋のダンナ……。なんで…?」
「何でも何も、ここは詰所だろ?」
いや、そっちじゃなくて、と即座に返す。
こういうところは彼もわかっているうえでいうので中々に意地悪である。
私が問いかけたいことは、そう。
何故私の隣にいたのかということです。
「何故お隣に……?」
「お前さんが寝たまま起きねぇからな。」
起きるまで待っていた、と軽く頭を撫でられながらそう答える。
その子供を撫でる手とはまた違う、優しくくしゃっと撫でる手に思わず恋をする。
待っている間にとはいえ、寝てしまうだけでなく肩を借りてた状態になるなんて顔が熱くなる。
「そ、その……ごめんなさい…。」
「これくらい気にするな。」
思わず少し距離をとってしまったけど、変に心の臓の鼓動がやまない。
もう恋仲宣言されて数日経つというのに、どうも緊張の糸は切れない。
どうしても片思いをそこそこ長く拗らせていたために、報われて昇華されるまで時間を要する。
それでもほんの短い時間ではあるけれど一緒にいたことに、幸せを噛みしめていた。
許されたのは夢の中で
(寝言で俺の名を呼んで…可愛いところあるな、お前さんは。)
(!!?え、え……嘘…ッ!)
(いい加減、この関係にも慣れてちゃくれねェか?)