こんなにも、好きだから。
燻り続ける想いには、どこを向ければいい?
「………相模屋のダンナって、綺麗な髪ですよね。」
「どうした、改まって。」
「いや、なんか……綺麗にまとまってるなって思ったんです。」
そういって、座ってひと息ついたところであなたに近寄り、そっと手を伸ばす。
綺麗にまとまった後ろ髪を指先に絡める。
さらさらとした、手入れが施された綺麗な髪に微笑む。
(こんなに綺麗なのが正直……正直羨ましい。)
「お前さんだって綺麗な髪じゃねぇか。俺は好きだぜ?」
「っ、ま、また……そのような……っ。」
また顔の熱が集まり視線が泳ぐ。
どうしてこうもしれっと言えるのだろうか、なんて冷静に考えたい。
だが後頭部に腕を回され、くいっと引き寄せられて掻き消された。
「えっ?!ちょ…………っ!」
少し驚くも、そのまま髪止めをはずされれば重力に逆らわずに髪ははらりと、落ちる。
仕事のときにどうしても煩わしくなるからと、休みの時くらいしか髪はおろさない。
ましては彼に見せたのは数回もない。
こうして、恋仲の関係になってからはつい最近。
片想い拗らせていただけだったのが、なんやかんやあって今の関係になっている。
紺炉さんは私を引き寄せて隣に座る形となる。
もともと近い距離だったのに、大きな手でさらに距離を縮め、
先ほど私がしたように紺炉さんは私の髪を指先に絡めた。
「あァ、お前さんの髪は綺麗だよ。何もしないなんざ勿体ねェな?」
「!そ、そうで、しょうか……。」
あなたがそういって指先に絡める仕草に、なんとも艶やかさを意識してしまう。
絡めとる髪は、髪止め以外には飾りっけひとつない。
仕事に真っ直ぐだった私が、綺麗になれないと思ってるしそもそも似合ってないんだろうなって時折考える。
それなのに、あなたは私にとっては嬉しい言葉を投げてくれる。
あなたの動作ひとつで優しさが溢れてるから、応えたいのにどうしたらいいかわからない。
一人で勝手に燻らせていると思うと心苦しい。
こんなにも、あなたのことが好きなのに。
「陽。」
「は、はい……っ!」
紺炉さんの声により、思わず我に返り返事を返す。
なんか、緊張して声が震えた。
(変なことを考えてしまったからなのか、どうしても意識してしまったんだ。私のばか!)
あなたがじっとこちらを見てくるから、ぴんと張り詰めたように背筋を立たせると、笑ってはくしゃくしゃっと撫でた。
その撫でた手を下ろして、きゅっと私の手に何かを握らせた。
視線を落とせば、赤い花がまず目についた。
綺麗な赤い造花がついた、質素ながらもきらびやかな簪。
「この簪は、お前さんのモンだ。」
きらりと夕焼けに照らされて優しく光る簪をそっとふれる。
そして、ぎゅっと握って見上げれば距離が更に近くなっていた。
あなたの指先が目尻に触れられて、優しく拭われる。
さらに想いが募り、すっかり顔はゆでたこだ。
返事を返そうにも言葉がつまり、返事を返せない。
質問の前に塞がれる視界。熱が一点に集中する。
ぎゅっと簪を握る手に、包むように手の体温が重なる。
鼓動がうるさいくらいに高鳴り、いつまで立っても収まりはしなかった。
触れられているのが唇とわかるのも数秒遅れはしたが、その代わりに足りない腕でぎゅっと抱き締めた。
夕暮れ時に照る君を永久に
(……受け取って、いいんですか………?)
(野暮なことを聞くな。……早く祝言をあげてしまいてェな。)
(えっ!?ちょ………っ!)