闇に骨を埋めるなら機械の光よりも月夜がよかった。
足元も血溜まりではなく人の道を歩く道がよかった。
自身を知りたい。
そこに手を伸ばして蓋を開ければ、知りたくもないことから負わなくてもいいものも負わされたとわかった。
私自身に自由はない。人生そのものも操り人形だったのかと初めて自覚した。
ならばマリオネットのまま生き抜くより、意思を以て死地に赴きたい。
そう決心をしたから、此処にいたのだけど。
「……はぁ。」
「なんでため息ついてんだよ。」
「そりゃ、つきたくもなるわ。」
あんたに半分ストーキングされてるからだ、とはっきり言ってやればこの男はニタニタと目元を歪めて笑う。
地下の秘密の場所で身を隠していたが、ところ構わず、この男に付きまとわれている。
匿ってもらってるしワガママは言うまい、と思っていたがそれにしても度を越えていた。
はぁ、これだからこの男は苦手なんだ。
腹が読めないといえばいいだろうか。
もはやミステリアス通り越して不審者といっても大して変わらないだろう。
「俺は聖陽の影の人間であったお前に興味津々なのによ?つれないなァ?」
「いい加減にしないとぶっ飛ばすけど。」
話を聞けば、こいつは偶然にも同じ暗部からの生き残りだったらしい…。いや、脱走者が正しいか。
同郷のよしみで仲良くしようぜっていわれたけど、ってことらしいがはっきりいえば苦手意識はある。
(あの機械じみた環境に吐き気がしてたところにカチコミ祭りがおっぱじまって、とさぐさに死を偽装して脱しましたけど。
あと殺してほしいあいつも消してくれたからお礼の気持ちはあるんだけどさ。)
あのときに初めて出会ったし、かつて影の人間として一緒にいた記憶もないのだが、
古巣同士ってことであるらしい。
だが、こんなにも歪んだ男に好かれるのは腑に落ちない。
「そもそもなんで僕なんか興味持つ。なにもないボクに。」
「でもお前は『舞鬼』の名を持ってるだろ?」
「それはあっちが勝手に言ってるだけだ。…ボクには関係ないです。あとその名で呼ぶな。」
蔑称まがいなその名前で呼ばれていい気分じゃないんだけど。
あぁもう、この不気味な笑みが本当に腹立たしい。殴りたい。
くつくつと笑う男はにたりと笑って音もなく近づく。
(こう言うところは本当に闇に生きてたって感じだよな…本当に。)
「そろそろ気づけよ。」
「は?なんの話し……。」
顔を向けると既に至近距離まで詰められてた。
音もなく近づいていたのはわかってたけど、ここまで詰められていたのか…!
思わず顔をそらすも手が伸ばされ、顔を至近距離に引き寄せる。
「俺はお前に興味があるんじゃない。お前が気に入っているだけだ。」
低い声が耳元で擽る。
ぞわっとした感覚に震えて、反射的に思わず拳を振り上げる。だがそれは虚しく空を切るだけであった。
「………は?冗談は顔だけにしてくれない?」
「おいおい、冗談はそっちだろ?」
ニヤリ、と男は嗤う。
綺麗に深いアメジストの瞳を歪ませて。
「いつまで似合わないことしてんだ?可愛らしい顔して勿体無いな?」
「ーーーーーーーーっ!!!」
少し色気を含む声に背筋が凍る。そのときに確信犯だとすぐに理解した。
いつから?自問自答したいけどそれどころじゃない。
隻眼の男は目元を歪ませ、顎をくっと持ち上げる。
深淵を覗く眼が、じっと視線を貫く。
昏い世界を覗くのは深い紫水晶
(お互い仲良くしような。゛舞姫゛)
(ふざけんな!!ぶっ飛ばす。)
(殺り合うってか?それも愉めそうだな?)