昏い地獄を抜けた初めての夜は今でも鮮明覚えている。
静かな静寂で月明かりが綺麗だった夜。
しかし、あの夜とは全く正反対なこの光景は初めてだった。
なんとなく、気分転換に夜の外を覗くとそこにあったのは、少し露骨さえ感じるキラキラとした光。
太陽のような圧倒的な光とは少し違う、色とりどりの光。
このキラキラした世界は無縁ではあったが心踊るのを奥底で感じた。
たまたまついてきてた男に視線を向けて問い掛けた。
「ねぇ、あれはなに。」
「あ?あれはな、イルミネーションってやつだ。」
「いや、その名前くらいは知ってる。なんでこんなにその光が多いんだ?」
街だけじゃない。
そう、どこか全体的にキラキラしたもので賑わっている。
地上ではこんなことが行われているなんて、まるで知らなかった。
「あー、そりゃあれだ。特別な祭があるからだろ?」
「特別?」
そのあとにジョーカーが軽く説明をしてくれた。
この時期は、ある昔のある神を祀る事柄だったそうな。
(今では名残だけ、というか形骸化しているだけらしい。
かつては多くのカミサマがいたもんな。)
その話は基地に帰りながら説明をきく。
といっても、非常にシンプルで簡潔な内容なのですぐに納得した。
だが、腑に落ちないのはそこではない。
別の問題がある。
「…そこまでは、わかった。……で、その格好はなんなの。」
「オイオイ、折角決め込んだってのに連れねぇな?リン。」
「いや、ボクに感想求められても困るんですが。」
いや、正直反応の扱いに困る。
なにせ、ジョーカーの決め込んでいた衣装が明らかに普段とは違う。
ボクがクリスマスなんて話題を振ったせいなのだろうか。
角付きの帽子に装飾が施され、赤を基調とした装い。
そして、妙にピッチリしているパンツ。
端からみて、とうとう女装趣味にまで目覚めてしまったのかと二度見した。
「……ボクは女物を着る男の知り合いなんていませんけど?」
「知らねぇのか?ユニセックスってやつだ。」
「?」
いや名前は知ってるし。
それでも、がたいのいい男がそれを着てはメチャクチャに目立つ。
がたいもあって背も高い。そんな男がコスプレのような衣装を着て街になんか出たら目立つ一択だ。
そんなことがわかってるから、一緒には歩きたくない。
同類と思われたくない一心で顔をそらす。
だが、決して無視できない言葉がこの後に落ちてくる。
「リンのもあるぜ?」
「………は?」
今、この男はなんといった?
聞き間違いであって。いやそうあれ。
だが残念ながらそんなことはなく男はにやにやと笑う。
「こいつを着てクリスマスは完成するんだ。折角だから洒落こまねェか?」
「いや、お断りしますけど。」
至極愉快そうに言うので、真顔で断った。
普段の着る衣装とは明らかに違う赤い帽子に赤い服。
しかも妙にスカートの丈が短い。
これを着てなんて意地でも頷けなかった。
特別な夜なんて訪れなくてよい。
とっくに訪れてたし、もう十分すぎている。
だから、今更の特別は不要である。
寧ろ、下心のある夜なんて断固拒否一択だ。
この変わった服を本当に着たかどうかは当人たちが知るのみとなる。
我々に聖なる夜は訪れない?
(遠慮するなよ?聖なる夜が台無しだろ?)
(いや、台無しにしてるのアンタなんですけど……ってか、離れろ!)
(残念だな?折角サイズがぴったりなのによ?)
(それでもよ……って、ちょっと待て。いつサイズ測ったの!?)