聖夜の魔法がとけるまで

今日は早く帰るつもりだった。
はい、本当ならば今日こそはの思っていたのだ。

それでも、定時より2時間も残業してしまってヘトヘトだ。
いつもなら直帰してベッドに大分するところだが、今日は違う。



「ふぅ、只今……。」
「お帰り。リンさん。」



帰路に着くと、隻眼の青年が声をかけてくれる。
私より年下でありながらもこのしっかりとしてるところは見習わなければとひしひしと伝わる。



「ごめんねー。今日こそは大丈夫かなって思ってたけど。少ししちゃったわ。」
「俺は別に構わない。」

「本当にいい子だよね。そんな君に、じゃーん!」



そんないい子の彼だから、今日だけは奮発しました。
見せたのは白い箱と少し大きめの袋。



「……なんだ?」
「チキンとケーキ!折角クリスマスなのになにもできないのもよくないな、って。」

「……。」



今日帰りたかった理由はそう、クリスマスだから。
本当は昨日にしたかったのだが残業が悲惨なことになってしまって思考はごっそりなくなってしまったので。
せめて、と。駆け込んで買いに走っては今に至るのだ。

それなのに、なんで無言なんですか?



「……あれ?反応薄い?もうごはん済ませちゃった?」
「いや、お前を待ってたから何も食べてはないが?」

「それなら少しは食べてて待っててもよかったのに!」


何も食べてない、ときいてしまったならそれどころではない。

今からすぐに用意するから!といって急いで支度を整える‥‥と思いきや、
チキンとケーキ以外は用意が終わってた。

(あ、やばい。あまりの準備のよさに泣きそうである。)

むしろ、準備までしてくれたのに今まで待たせていたのが申し訳なさすぎる。
電子レンジでチキンを暖めながら、コートだの鞄だのを片付けて、少ししてテーブルに並べた。



「お待たせ。じゃ、食べよっか。」



そう告げれば、こくりと頷いては早速料理に手を出す。
予め用意してくれたおかげですぐに食べられるのは本当にありがたい。
一緒に暮らすようになってそこそこ経つが、本当に良くできている。



「ふぅ、本当に助かったよ。ありがと、52くん。」
「リンさんが喜んでくれてよかった。」



いい子すぎて涙でそうだよ。
そんな彼にはこういった形でしかできないのが少し歯がゆい。

プレゼントの1つでも用意すればよかった。とぽつりと呟いて謝る。



「プレゼント用意できなくてごめんね?要望きけばよかったね。」

「‥‥リンさん。」
「なに?」



少し沈黙して彼が口を開く。
何か可愛らしいおねだりを聴けるのかなんて思うと、じっと待った。



「‥欲しいもの、いってもいいのか?」
「まぁ、私が用意できるものであれば、」

「だったら、リンさんがほしい。」



即答だった。

幾度目かのアプローチ。
まさかこの手で来るなんて思いもしなかったので、思わず目を丸くした。

あなたのその言葉は聖夜の魔法にかかっているから?
それとも‥‥本気だから?





聖夜の魔法がとけるまで
(俺はずっと待っているんだが?リンさん。)