さて、困ったことがある。
待ち合わせ場所で52くんを待っていたら、全く知らないひとに声をかけられた。
お茶しない?だの、可愛いね、だの言われてるから
おそらくはナンパと呼ばれる部類だろう。
それにしても、なんで声をかけられたのだろう。
(自分でいうのも中々悲しいけど、私地味ですよ。もうちょっとキラキラした子を選ぼうよ。)
シンプルな誘い文句だけど、何て断ればいいんだろう。
その思考でぐるぐる回った。
でも、はっきりとはいえなくて少し誤魔化すように常套句を上げた。
「えっ、と‥‥その‥‥人を待ってて‥‥。」
人を待っているのに、と言ったものの連絡先まで聞いてこようとする。
‥‥流石に食い下がらないので困った。そろそろ怒らないといけないかな?と思っていた矢先。
後ろに重心がずしっとのし掛かった。
「俺の彼女に何か?」
聞きなれた声に安堵する前に、唐突に驚いてしまう。
思わず振り返れば、その彼の名を呼んだ。
「っ!ふぁいぶ、つー‥‥くん‥‥。」
ぽつりとか細く声がかかる。
久々に一緒の外出をしたからか、少しきっちりめではあったが派手すぎず、シンプルでありながら黒で統一した装い。
それでも目につくのは黒い眼帯で覆われていない綺麗なアメジストの瞳に、どきりと意識をする。
その声を受けとるかのように後ろからグッとハグしていたが、肩にかかる重さが解かれて手首をきゅっと握った。
ちらりと52くんは執拗に誘い続けた男の方をみて一言言い捨てる。
「見る目あるけど、俺のだから。」
彼の言葉に思わずを赤らめてしまい、思わず聞こうとしたが流された。
ぐいっと腕を引く力が少し強い。
男はなにか言いたげではあったが、さっさと無視してはスタスタ歩きだしてしまう。
「ほら行くよ。」
「えっ!ぁ、ちょ‥‥!」
少し早歩きで52くんは私の腕をずるずると引くので、勢いのままに私はそのまま歩幅が細かく引かれた。
少し距離を離すと、あなたはもういいだろうといって繋いでいた手を離した。
唐突なことではあったが、助けてくれたことはお礼を言わなくては。
(ちょっぴり強引ではあったが、むしろ52くんから言ってくれたことで助かったものでもあるし。)
そう思って声をかけるとあなたは真剣な顔をしてこちらをみた。
「‥‥‥あ、あの‥‥助けてくれて、」
「こういう時くらいさ。」
「?」
「俺を頼ってくれない?」
そういって、あなたは私の手をぎゅっと握ってくる。
あなたの顔が少し拗ねたように‥‥も見えた。
年下の彼だからかそのいじらしい一連の行動がだんだん愛しくなる。
なんだかそれがとてつもなく嬉しくて、お返しにぎゅっと握り返した。
少し張りつめていたから気づくのに少し遅れたけど、彼の手はとてもあたたかった。
「う、うん‥‥‥ありがと‥‥‥52くん。」
ふにゃりと笑いかけると、少し照れたのか白い肌がほんのりと赤くなった、気がした。
君の心は相変わらず何を考えているかは読めないけど。
信じてもいいんだよね。
君が私を好いていてくれることを。
無自覚なわたしと意図的なあなたと
(ねぇ、何で私って声かけられたんだろ‥可愛くもないのに。)
(リンが思ってる以上に可愛いからだろ?)
(‥‥‥‥‥えっ?!)