もし、満天の星空しか聞こえていないのなら、
私は高々に叫んだ。
幾つもバチバチと鳴り響く花火の音で掻き消してくれるだろうから。
この音になら抱えていた感情をぶちまけられただろう。
「相模屋さん。好きです!!!」
本人には決して言わない感情。
したところで報われないことは知っていたから。
だから、花火の音で掻き消して感情をぶつけた。
大きな花火の音で私の思いごと掻き消してくれただろう。
ただそれは、その場に、誰もいなければの話であるが。
「………草薙の姉ちゃん?」
「!!!!!」
まさかの本人がここで現れるなんて思いもせずに。
あぁ、正直終わった。
本人に言うつもりなんてなかったのに、なんでこのタイミングで来てしまったの。
穴場だったのに。
きれいな花火を間近に見られて、かつ人も少なかったのに。
なのにどうして、あなたはここに来てしまったの。
「……おい、姉ちゃん。さっきのをもう一度だ。」
「え、えっと…なんのことでしょう。」
ガシッと肩を掴まれて、じっとこちらを見る。
滅茶苦茶視線が痛い。
目線を反らそうとしたが、顎を掴まれて頭を動かせなくなった。
これは、白状するしかない、と脳内で告げられた。
「…………相模屋のダンナが…………………好きです。」
「……………。」
半ば尋問のようで絞り出すように私は告げた。
諦めたようにか細い声で。
しかし、彼はその言葉をしかときいたかと思えば沈黙してしまった。
ほら、滅茶苦茶困ってる。言わんこっちゃない。
いやこんなのは用意に想像できた。
こんな小娘の告白なんて、味気ないなんて決まってる。
「い、いえ…私のことはお気になさらずに。
で、ではっ、お休みなさい!相模屋のダンナ。」
なんであんなこと言ったんだろうか。明日からどの面下げて会えばいいんだろうか。
改めて思えばますます恥ずかしくなって、顔もろくに合わせられない。
玉砕したって結論付けて忘れてしまいたいけど、それはそれで辛すぎる。
冗談だ、って笑えたらいいのにどうしても笑えない。
足を進めると、ピタリと足が止まる。
それは、腕を掴まれてて歩を進められないから。
「お前さんは笑ってた方がずっといい。」
「!………あ、あの。相模屋のダンナ……っ。」
「お前さんの笑う顔は、俺も好きだ。」
どうして、こんなに掻き乱されるのだろう。
どうして、こんなに心が騒ぎ踊るのだろう。
その言葉ひとつで、惑わさないで欲しい。
私に希望なんて与えないで欲しい。
「っ!あ、あ、あの……っ、なんで……っ。」
「?何を言ってるんだ。お前さんが言ったんだろ?」
確かに。花火に向かって失恋紛いのことを言いましたよ。
打ち明けるつもりなんてなかったし、打ち明けたところで玉砕まっしぐらじゃないですか。
「……私、小娘ですよ?釣り合わないかもしれないんですよ?」
「ンなの関係ねぇだろ?
お前さんが俺を好いている事実があるだけで十分だ。」
そういって、触れるだけの口づけを落とされる。
心臓が爆発するんじゃないかって熱が身体中に走る。
それは瞬く星のように一瞬で、全身に熱を帯びる稲妻のように。
満天の星空が満ちる夜の中の出来事でした。
ドン、と大きな花火が再び咲き誇る。
それはまるで祝福のようだった。
約束は満天の星空に誓って
(あ、あ、あの……っ、相模屋のダンナ……っ!)
(まずはその呼び方をなんとかしないとな?逢引のときぐれェは名前で呼んじゃくれませんかね?陽。)
(な…!ななな……っ!!!)