君色の花。


君の色はどんな色でしょうか。




「蓮ちゃーん。」
「‥‥?ど、どうか‥しましたか?」



大人しい子。
異性とも同性ともあまりおしゃべりをしなくていつも本を教室で読んでいる子。
小難しいと思われる本をただ黙々読んでいた子。

少し幼めの顔なのに顔つきは整ってて。
髪が長くてさらさらのストレート。艶々した黒髪に思わず触れたくなる。
それが霧島蓮というクラスメイトだった。


話しかけたのは気まぐれ。
幼めの顔から想像出来ないくらいに、本を読んでいる彼女は凜としていて。
高嶺の花にみたいだったけど、不意に、手を伸ばしたくなったんだ。



「なんかいっつも難しそうなの読んでんな。」
「‥‥そうでしょうか?‥字に慣れると‥楽しくなりますよ?」
「うわ、そういうのはオレはパスだわ。」



『‥‥確かに‥慣れないと難しいかも‥‥。』と返してはただ本を読む。
その視線が一瞬で本にまた戻される。‥はずだった。



「蓮ちゃんさ、なんでいっつも本読んでんの?」
「え‥‥?」



本を日頃から読んでる彼女に、何で読んでるかなんて聞かれては少々戸惑うだろう。
だけど、彼からすれば、彼女の。蓮の本への執着は半端なかったのだ。



「休み時間も放課後も。あと朝早く来て読んでるよな?」
「‥‥っ、いつも‥見ていたのですか?」
「たまたま。いっつも一人で本をずっと読んでたから気になってな。」

「‥わ‥私、‥‥苦手なんですよ。‥だ、誰かと‥おしゃべりするの‥‥。」



あぁ、これで理由は発覚。ある意味、壁を作ってたんだ。この子は。

人と話すのを苦手と告げて、蓮はまた目線をまた泳がす。
そんな初々しい貴女が可愛らしくて、さらに距離を縮めにかかる。



「なぁ、蓮ちゃん。なんでオレが知ってるか気づいてる?」
「はい‥‥?」
「オレが、蓮ちゃんが本を朝も放課後も読んでることを知っている、って。」
「‥‥え‥、え?」



あぁ、やっぱり気付いていないんだ。
そうだよな。この子は人の視線とか気にしない。

向いているのはあくまで、蓮が持っている本で。意識も同じ。
だったら、オレがその目線も意識も貰っていきたい。



「オレ、見てたんだぜ?」



にこりと、笑みを浮かべてはすぅっとマジな目線で。
蓮のことを。ただ一点集中させて。



「ずっと蓮ちゃんのこと。」



君の色を、君らしさを。もっともっと、オレに視させて。
凛とした高嶺の花を、もっと近くで。





君色の花。
(あ、あの…高尾、くん……?)
(やっと呼んでくれたね?蓮ちゃん?)