花君の感情は蕾のままで。
高嶺に咲く、一輪の花。
些細なイタズラ心が真似いた結果だったけど、
あの彼女のどこか折れそうなところに酷く惹かれた。
あぁ、そっか。ようやく気付いた。
「蓮ちゃん。」
「…あ、……高尾、くん…。」
目線をこっちに一瞬くれたけど、すぐに逸らしてしまった。
(あぁ、もっとこっちを見てくれよ。)
前に蓮の前で告白した。
視ていた、と言うことをいった所為なのか。
声をかける前と後とでは、ほのかに顔を赤らんでいる。
(ホントに、可愛すぎて困るわ。)
「また読んでんの?」
あぁ、どうしようか。もっと触れたくなった。
いっそのこと折ってしまって隠してしまおうか。
凛としていてもどこか弱弱しい。それなら堕としてしまおうか。
(オレだけ、オレだけを見て。)
オレは衝動となって彼女、蓮に触れた。
「…なぁ、蓮ちゃん。もっと顔、こっちに見せて。」
「……ッ!」
顔をくいっと上げれば蓮は益々顔を真っ赤にした。
(可愛すぎてもうこのまま連れて行きたいくらいやばい。)
「可愛いなぁ、ホント。このままイケないことしちまう気分だわ。」
意地悪したくなって蓮の耳元で囁けばまた赤くなる。
意味は知ってるのか知らないのか、蓮は赤らめた顔を隠すようにして俯く。
「だ、だめ……です……っ、こういう、のは……。」
「くくっ、冗談だよ冗談。」
更に意地悪したくなるが、これ以上したら嫌われるだと思っては離れた。
気になるからもっと距離を詰めたいが、嫌われて離れてしまっては意味がない。
そう頭に言い聞かせながら、蓮の頬に優しく触れる。
まだビックリしているからなのか、蓮の体は僅かに震えてた。
「でも、蓮ちゃん。」
「…は、はい……?」
「オレの視線もだけどさ、オレの気持ちにも気づいてた?」
きっと君は鈍感だろうから、こっちからゆっくり近づく。
距離を縮めるだけで蓮の顔は益々赤らみを強くする。
トン、と後ろが教室の壁になれば距離を数十センチまで縮めてきた。
私が横から逃げられないように手を顔の横に置いてきて。
すぅっと。私を見つめる視線が鋭くてぞくりとする。
「あ、あの…た…高尾、くん……。」
「なぁ、蓮ちゃん。オレ、蓮ちゃんが好き。」
少し照れくささと真剣さが混じって視線をこちらに向けたまま。
何を彼が言ったのか訳がわからなくて、ショート寸前。
いつもムードメーカーな彼が、こんなに真剣の表情に視線を逸らしたくても逸らせない。
「…ッ、ぁ…あ…高尾くん……。」
「だからさ、蓮ちゃんもオレのこと名前で呼んで?」
また真剣とはちょっと違う柔らかい表情。
あぁ、お高く留まってた訳じゃないのに。
今までにない感情に、酷く崩れそう。
この感情を知るのは、もう少し先。
花君の感情は蕾のままで。
(なぁ、蓮ちゃん。まだ言えない?)
(あ…ぁ…あぅ、な、な、名前…で…。)
(んじゃ、言えるようになったら呼んで?)