外の空気が冷えてくると、恋しくなるものがある。
最近の寒さは急激に舞い込んだと本当に思う。
ついこの間までは夏なんてさっさと終われと思ってたが、
今は丁度いいを通り越して少々肌寒い。
所々では自販機だとかコンビニだとかでホットも少しだけ置かれるようになった。
夜とか…特に遅くまで学校に居れば、
外に晒される風が薄い足元とかにひんやり伝わる。
もう、ブレザーが上着代わりで今じゃ、羽織れば丁度いい。
「うぅ…まだマフラーとかは必要ないけど…寒くなってきた…。」
学校のすぐ近くに途中にあった自販機でホットのカフェオレをひとつ。
直接内部から通さなくても、この缶を両手で包めばその熱が今では手放せない。
軽く上下に振った後、蓋を開けてはくいっと一口飲む。
優しいミルクの味と、ほんのり苦めなコーヒーが味が、
うまいこと混ざり合っててとても甘くて美味しかった。
「…ふぅ、落ち着く。」
「ん?そこに居るんは蓮か?」
声が掛かればそこにいたのはブレザー姿の今吉先輩。
人の良さそうな糸目をして笑みを浮かべるも、この男の腹の中は真っ黒だ。真っ黒。
「…今吉先輩、なんでここに…?」
「部活今日なくてなぁ、今日はよぉ冷えるから暖取ろう思うて。」
暖を、と言ってコインと入れては選択してガシャンと缶が落ちる。
拾って手に取ったものを見れば、それはブラックコーヒー。
軽く振っては手馴れた手つきで蓋を開けて飲む。
それを見つめつつ、自分も買ったカフェオレを飲めば、今吉がこちらを一瞥した。
私の、カフェオレの缶を。
「ん?蓮はカフェオレなんか?」
「そうですよ。珈琲はブラックは飲まないので。」
「飲まないやなくて、飲めないやなくて?」
「……そうですよ、飲めないんです。苦いですし。」
本当にこの先輩は性格悪いよねって思う。
私が飲まないと言ったのに、飲めないって言い換えやがった。
恐らく私の考え事なんてお見通しで、
図星だとわかれば嬉しそうに笑みを浮かべてぽんぽんと撫でてくる。
「蓮は味覚が子供なんやなぁ、可愛ぇ。」
「ッ…!前に飲んで失敗したことあるんですよ。だから…それっきりは飲んでないです。」
あぁ、そうだよ。
ちょっぴりでも大人の味に挑戦してみようかと思ってた頃あったんだよ。
だけど、その思惑は大失敗。
初挑戦で飲めなくて何回か分けて飲んだが、結局飲めないってことで折れたのだ。
「そなんか。なんか残念やなぁ。」
「……?何が、ですか?」
「もしまだ試したことないんやったら、
ワシが直々にブラックの味教えようかと思てたのに。」
「…謹んでお断りします。」
此方が丁重に断ればへらっと笑っては『ツレないなぁ』なんて言う。
どう考えたって下心で言っていたことはバレバレなのに。
もう知らないなんて思ってはまたカフェオレにひとくち。
優しいミルクの味とほんのりコーヒーの味がした。
「なぁ、蓮。」
「……?はい…?」
唐突に、今吉先輩に声を掛けられたためにそちらに視線を向けた。
今吉先輩のブラックコーヒーが残り少ないのか空なのか、軽く横で振る。
「せやったら、ソッチ貰おか。」
「へっ…?……ッ!!」
そういって、自由な片手でくいっと顎をつかまれて視線をしかりと合わせる。
そのままぐいっと寄せられては、唇にふわりと熱が帯びた。
わかってたはずなのに、止める事もせずに結局拒めなかった。
「えっ?…え?」
こちらがこちらでポカンとしてれば、
ぺろりと舌舐めずりして今吉先輩は耳元でそっと囁いた。
『ご馳走さん、蓮。』
満足げな笑みと浮かべる今吉先輩に、一気に顔を真っ赤にした。
時間が経って少し冷めてたはずなのに、また熱を取り戻した気がした。
ホット・コーヒーの暖
(せっ、今吉先輩?!なな、なにして…?!)
(何ってキスしたに決まってやろ?やっぱ甘いなぁ、蓮もや。)
(な、な…っ!)
(顔真っ赤にして、ほんま可愛ぇなぁ)