音が告げた言の葉は。
今まで、蕾のように固かった私の感情。
だって、だって。今までこんなになることなんてなかったから。
「なぁ、蓮ちゃん。」
「…っ!」
後ろからぎゅうっとされるのは、もう何度も経験した事なのに。
どうしてだろう、アナタの声がとても悲しそうなの。
「今日こそ、聞かせくれよ。蓮の本音。」
「…ッ、え……?」
「だって、オレ。蓮の本音聞いた事ないしさぁ。
オレとしては蓮の声聞きたいんだよ。」
私の、本音…?
その言葉にずきりと心臓が痛むのを感じた。
声が悲しく感じたのはその所為なの?
私が、いつまで経っても声を出さないから?
だって、すごく怖いんだもん。本音を誰かに言うのって。
本音は人間が成長すればするほど言わなくなる。
すべて建前で構成されて、次第には本音は分厚い殻で覆われる。
そして私は、既に分厚い殻で閉じ込められた。
「オレにキスされたり、名前で呼べって言ったり…ホントのとこ、蓮はどう思うわけ?
イヤなら、別に呼ばなくたっていいんだぜ?」
「っあ……。」
イヤなら言わなくたっていい。
まさか、アナタからそんな言葉を聞くなんて。
正直、ツライ言葉だ。これが建前なら痛みを感じないのに。
どうして…?すごく心が痛い。
「ってか、オレに一方的に好きだの言われて、いいわけ?」
好きといわれて、キライなわけはない。イヤなわけはない。
寧ろ、嬉しかった。
そんな風に、思われてるのって。今までなかったから。
人に関わるのと極力辞めて諦めた私だったから。
「オレは、蓮の本音が聞きたい。
蓮の本音なら、キライでもオレは受け入れるから。」
キライでも受け入れる、嘘吐かないでよ。
人と関わる事を諦めてはいるけど、その言葉が本音か否かはわかる。
そして、アナタの言葉は嘘だ。
「…ッ、っ…ぁ…あ、…わ、私…は…っ…。」
どくんどくんどくん、心臓の音がすごく煩い。
えぇい、少しは黙って!
いや、黙ったら死んじゃうけど、少し静かにして。
痛くて痛くて。言葉に出すのがすごく怖い怖い怖い。
「なぁ、蓮。」
「わ、わ、私…は、ッ…高尾、くん、の…こ、こと……。」
アナタがなんていうか、なんて言ったらどう反応するなんて私には全くわからない。
人を余りにも見なさ過ぎた私には、過酷過ぎる。
音に出すのも、正直つらい。
だけど、このまま沈黙を貫いてアナタがつらそうな顔をするのもすごくイヤだ。
お願い、私に勇気を下さい。
音に出すのを恐怖を感じる、私に。
「…す、き………。」
あぁ、もうちゃんと声として言えたのかな。
もう名前を呼んだ辺りから記憶がないよ。
このまま気を失ってもいい?寧ろ記憶を抹消してなかったことになるかな。
もう、立つだけでも手一杯なの。
かくんと膝から崩れ落ちる。
夢、夢なんだ。こんな風に本音が言えたのは、私の夢に違いない。
なのに、どうして。高尾くんがすごく嬉しそうに笑うの?
なのに、どうして。こうも私から涙が止まらないの?
「オレ、すっげぇ嬉しい。蓮。」
ぽろぽろと零れる涙が全く止まってくれない。
そして高尾くんは優しく指で涙を拭った。
でも、私の涙は止まらない。まるでイタチゴッコ。
だけど、消えてしまいそうな君の本音は間違いなく。
霧島蓮の本心だった。
音が告げた言の葉は。
(やっと、言ってくれたね。蓮ちゃん。)
(ッ…は…、ゆめ、じゃ……。)
(なに言ってんだよ、全部ホント。)