今日は珍しく、青空が広がる屋上だった。
ここ最近天気が安定しなかったのもあってずっと室内で食べていたが。
今日は待ってましたとばかりに空がとても澄んでて心地よい。
ほんの少し嬉しそうな足取りで屋上に向かうと、誰もいない。
定位置に座って、空を一度見たらお弁当を広げて食事をひとりでする。
そして、食べ終わったら、昼休みが終わるまで読書。
「…んぐ……んっ、はむ…。」
その日課が、いつもそうだ。
いつも一人で食べてるのが日課だったのだが、ある日を境にそれは変化する。
すたすたっと足音が聞こえ、前には人懐っこい笑みを浮かべて近づく。
私の、彼氏。
「蓮ちゃん。」
「…あ…。よく、わかったね……高尾くん…。」
「へへ、まぁな。ひとりでごはん?」
こくん、と遠慮がちに頷いた。
そうするとにこりと笑っては『一緒に食べよ?』と言い出した。
そんなわけで、今屋上で一緒にごはん。
というか、なんでここの場所がわかったんだろうとか思ったけど、
高尾くんのことだから『蓮のことはすぐにわかるよ』なんて言って返すんだろうな。
「なぁ、蓮。」
「…?はい……?」
「ひとつ、貰っていい?」
『…え?』と少し反応が遅れた。
どうやら私のお弁当に興味を持ったらしく、それと言って弁当のおかずを指してきた。
まぁ、ひとつだけだしいっかと小さく頷いて返事をした。
「なぁ、これって全部蓮が作ったのか?」
そう問われると、これも小さく頷いた。
『すげぇな』とか『やっぱり女の子なのな。』と明るく笑う。
やっぱり、彼の明るい笑顔は好きだ。
出し巻き卵を筆頭に、たこさんウィンナー、揚げ物。
バランス良くするために野菜や小魚も入っている一見ごく普通のお弁当。
揚げ物をはじめとする殆どのものは予め作ったものを冷蔵庫で保管し、
翌日に加熱させては軽く冷まさせてという作業だが、ひとつだけは毎日作っていた。
それは出し巻き卵だ。
元々作るのが下手で繰り返し練習していたのがきっかけなのだが、
上手く出来るようになってからは、こればかりは朝に必ず作るのも日課だった。
「じゃあ、蓮の自信作貰おっかな。」
そういって、自信作の出し巻き卵を指名する。
一口サイズに切っており、私はどちらかと言えばほんのり甘さがあるくらい。
でも甘すぎない味が好きなので、おそらく食べやすい方だと思う。
何口分のうちのひとつの出し巻き卵を箸で取ると、嬉しそうに口を開けて待っている。
いかにも『食べさせてくれ』というサインに一瞬呆気に取られてしまう。
だけど、やっぱり彼の喜ぶ顔は好きなためにお望みどおりに口に運んだ。
味わうようにして食べる彼を見ては少し心配になる。
当たり前のことだ。
自分を好いてくれる相手に自分の作ったお弁当を目の前で食べてもらっているんだから。
(ひとくちだけの出し巻き卵なんだけど…自信作だから。)
こくん、と小さく喉に流すとこちらを見てはにこっと笑った。
「ん。やっぱすげぇよ、蓮ちゃん。」
「…美味しい、ですか?」
「当たり前じゃん。ってか、ホントすげーのな。」
アナタの余りの喜びっぷりに少し驚いてしまう。
だけど、嬉しそうに笑うアナタを見ていたらなんだかこっちも嬉しくなる。
少し照れくさそうにしながら、私は笑った。
Rolled omelet
(蓮って料理も上手いのな。今度俺のも作ってくれね?)
(…えっ?……いいですよ…。)
(お!マジかよ。)