優しい背中に安堵して
余り迷惑はかけたくなかった。
でも、呼ばれてたのもあって、耐えながら向かっていった。
今日に練習試合があるから来てよ、というお誘いがきっかけだった。
わかったよと言って指定された場所に向かっていた最中、階段で思わず足をくじいてしまったのだ。
「…ッ、あたた……。」
時計を見れば練習試合が始まってしまう。向かわなくては。
でも足の痛みで、どうも間に合いそうにない。
高尾くんには申し訳ないけど、途中からということにしよう。
そういって、ゆっくりとした足取りで向かっていったのだ。
*
一方。
「遅せぇな、蓮ちゃん。大丈夫かな?」
練習が始まる数分前にあたりを見渡したものの、見に行くよと約束した彼女がまだ来ていなかった。
当日になってドタキャンするような子じゃないのは、高尾自身がよく知っていた。
何かあったのかな?と思いつつも試合が始まってしまえば止めることはできない。
「始まるぞ、高尾。」
「あ、あぁ。わかってる。」
「…霧島が心配か?」
「まぁな。でも今は試合試合、っと。」
へらりと先輩たちに笑いつつも、最初の挨拶を交わしブザーが鳴り響く。
少しの不安を抱えつつ、練習に臨んだ。
*
「ふぅ…ようやくついた…。」
予定よりも20分を超えてしまったが無事に着くともう半分は終わっていたらしい。
時間が経過し、ゆっくりとした足取りでようやく会場に着くと、すさまじい光景に目を奪われた。
あんなに人懐っこい高尾くんが、鋭い視線で見渡して、受け取ったボールを回して行ったりする。
そして受け取ったクラスメートの緑間くんが綺麗にシュートが入ったりする光景がとても鮮やかに見えたのだ。
今は足を痛めていたはずなのに、今はその痛みすら忘れるようで。
見入っていたのかもしれない、と思ったが気付けば試合終了。
ハッと気付いた時には練習試合だったのに、違う一面を見れてドキドキしている。
違う言い方をすれば…見惚れていた、のかもしれない。
「お!蓮ちゃん。来てくれたんだな。」
すっごいニコニコと嬉しそうにしている高尾くんの姿にハッとする。
既に着替えてしまっていたが、嬉しい気持ちと申し訳ない気持ちが交差する。
「遅くなってごめんなさい…高尾くん。」
「いいっていいって、それより…足、大丈夫か?」
会うなりすぐに気付かれた。
まぁ、足に包帯巻いてるからどうしても気付いてしまうのだろうと思ったけども
『はい、大丈夫です。』と微笑む。
多分大丈夫じゃないけど、ごまかすように微笑んだ。
大丈夫じゃないのに気付かれちゃうんだろうな、なんて思いつつも試合のすごさを唯々話した。
「霧島、だったな。」
「ッ!?え、っと……緑間くん…?」
「お、真ちゃん。」
既に着替えを済ませていたようで、気難しそうな私のクラスメートが話しかけてくれた。
確か、緑間くんであってたと思う。
そんな彼が私を見るなりして、高尾くんに視線を向けてはしれっと。
「高尾。送ってやったらどうだ。霧島。その様子ではここまで来るのに苦労しただろう。」
「…えっ!?そ、そんな試合終わったばかりで…。…二人に迷惑、かけるわけには…。」
「俺は俺でこの後用事がある。霧島が来るまで待っていたのだろう?
さっさと送ってやれ。」
「サンキュ、真ちゃん。」
私の知らないところで話がトントンと進み、どうやら話は終わってしまったらしい。
『フン。』と軽く息を吐いてはそのまま後にしてしまった。
ぽつんと残された私と高尾くん。
気難しそうな彼を見て大丈夫なのかと問いかけたら
『大丈夫、真ちゃんはツンデレだから。』と笑い返した。
「んじゃ、決まりだな。」
「へ?きゃあっ!?な、何して…ッ!?」
「足痛めてんだろ?俺に任せておけって。」
そのまま姫抱っこされて向かったのは、リアカーに自転車が繋がれたもの。
俗にいえば、チャリアカーだろうか。
「え…?これって。」
「蓮ちゃんって自宅ドコ?」
「そんな…時間かかってしまいますし…。」
「いいっていいって。弱ったとこくらい頼れって、な?」
すとんと優しく下ろされ、初めて乗ったためかドキドキする。
確かにここに座ってれば痛みを耐えることもないのだが、申し訳ない気持ちを感じた。
「ありがとうございます…。なんだか…新鮮です。」
「気にすんなって。普段は真ちゃんが乗るくらいだしなー。」
『それも試合見に行くときにな?』なんて笑いながらも
私はチャリアカーに乗せられ、高尾くんも自転車に乗っては漕ぎ始める。
必死に自転車を漕ぐ高尾くんの背中が、何だか男らしくて頼もしくて。
慣れていないために落ちそうになるのを堪えながらもその背中をみる。
何だか、こういうのも悪くないと思いながらもちゃんと治そうと決心したのである。
そして後日。
緑間くんにちゃんとお礼をしようと好きなものを聞きながら帰ったのである。
優しい背中に安堵して
(高尾。何だこれは。)
(蓮ちゃんからお礼だって。渡すの恥ずかしいから頼まれてな?)
(…当然のことをしたまでだと伝えておけ。)
(ったく、素直じゃねぇな。)