電話越しの音に乗せて


実は、あと数時間で誕生日だって知っていた。
知っていた理由はずっとずっと、見ていたから。


バスケのIHに向けて練習真っ最中のなか、私はいつものように邪魔にならないように練習風景を見ていた。
マネージャーではないけど、ずっと見ていたら半ばそんな扱いになっていた。

休憩を告げるアラーム音がなれば、マネージャーの真似事みたいにドリンクとタオルのセットを配って回った。



「ほい、お疲れさん。ユキ生きてるー?」
「ったく…まだ終わってねぇよ。」

「ははっ、勿論知ってるよ。でもちゃんと水分取らないと倒れるぞー。」



豪快に笑って渡してやれば悪態を吐きつつも、ちゃんとお礼と言って受け取る。
海常高校バスケ部キャプテンの笠松とは幼いころからの幼馴染。

もう物心つく前から知り会っちゃったものだから、女子が苦手という部分に当てはまらないレアな存在らしい。
(知らない間に女子とは写真すらアウトってどんだけ初心なのよ。)

まぁ、色々聞きたいこととか敢えて黙ってるよ。
うん……。黙っててやるよ。


『んじゃ、後でなー。』とくすくす笑いながらひらりひらりと手を振ってその場を去る。
その直後に空になったボトルを投げてくるが勿論問題なく受け取ったけど。



勿論、ずっと見ていた彼を。
想いを寄せてはいたが、告白するのは止めていた。
ずっとずっとストイックに練習を積んでいた彼の邪魔にはなりたくなかったから。

せめて、せめて。IHが終わるまでは。と誓っていた。




「じゃ、明日頑張れよ。ユキ。」
「おぅ、って試合来ねぇのかよ。」

「え?来てもいいの?正式なマネージャーじゃないのに。」
「いいんじゃね?監督もマネージャー扱いしてるみてぇだし。」



いいのかそんな簡単で。
まぁ…確かに前にマネージャーじゃないのに、真似事のように部活でのサポートこなしたら
追い出されることなく普通に受け入れてたけど……いいのかそれで。



「…ま、明日間に合ったらついてってやるよ。」



そういっていつものようにひらりと手を振る。
邪魔はしちゃいけない、変な感情とか起こしてはいけない。そう言い聞かせて。



「ユキ。」
「あ?」

「じゃあ、インハイ全部片付いたら、付き合ってよ。」
「……は!?」



何で暫く無言になったの。それもほのかに顔が赤い気もする。
一瞬何を勘違いしたのか、それが分かってはくすくすと笑ってしまった。



「そういう意味じゃなくて、買い物!
今までインハイに向けてのサポート付き合ったんだからそれくらいはいいでしょ?」



なんでユキが顔赤くなってんのよ。そういう意識させるな、変に緊張するから。
なんか少し照れたように小さく返事するし。

あぁ、もうこの鈍感。普段の男らしい頼もしいところはどこ行ったんだか。
くすくす笑いつつくるりとひるがえせば、各々の自宅にへと別れる。


色々考えた。ついていくのもどうかと思っていた。でもいいと言ってくれた。
だったら、私は…。ひとつの決断をする

少し歩いて家に着いて部屋に戻った時には零時を回っていた。
多分、彼もそろそろ戻っているころだろうと携帯電話を取っては数十分前に会った彼に電話。

もう寝てるかも、と思ってたがすぐに通話中は本人につながった。



「……もしもし。ユキ。」
「なんだよ、何かあったか、」

「大事なこと言い忘れてた。」



彼の言葉を飲み込む様にして私は言う。
多分、本人を前にしたら緊張しすぎて言えなくなるだろうから。



「誕生日、おめでとう。ユキ。」



忘れてたでしょ?と小さく笑う。
本当にストイックで、勤勉家で、鈍感な幼馴染。

恋愛のメッセージはまた今度にしても、せめてこれくらいはと言い聞かせて。





電話越しの音に乗せて
(鈍感なユキだと思って、これだけ言おうと思ってね。)
(………鈍感はどっちだよ。)
(……?何か言った?)