あのシルエットは、出来る事なら関わりたくなかったアイツ。
だけど、どうしてだろうか。
この、初めて会った時とは全く違う“違和感”は。
「…?あんた…誰?」
スッとショットガンを構えて、目の前の男に向けた。
眼に映るのは、正真正銘ハザマであるのに。
違和感が纏わりついて放さないのだ。
「お。俺様がわかるのか?ヒスイちゃん?」
「何となく…なんとなくだけど、ハザマ“じゃない”のは判る。それだけだ。」
帽子を取り、逆立つ髪は明らかにハザマの時とは違う気配が漂う。
それだけでも、ハザマ“じゃない”という理由にするには十分すぎる。
「へェ…ちったぁやるじゃん?流石は“元・准佐サマ”って所か?」
「余りその謂れは好きじゃないのよ。」
「ならヒスイちゃんで構わねェよな?」
「それもちょっと…まぁ、無いような階級言われるより幾らかマシだけど。」
准佐、なんて言う者はごく限られている。
唯でさえワタシという存在はあるが、統制機構准佐となると話は別。
「ふぅん…。」
「な…なんです、か。」
「よく見ると中々じゃねェか。ん?」
「……は?」
ズイっと距離が縮んではまじまじと見られる。
ハザマの時には余り見られない黄金の瞳がハッキリと見られているのが判る。
その眼で見られて、ぞくりとする。
この感覚は、ハザマとは違う感覚だ。
するりと頬を撫でる手がどうも違和感が気味悪くて、私は手を払った。
判るのは、ハザマのとき以上に警戒しなければならないと思ったから。
これもあくまで感覚での話だが。
「ヒスイちゃん。」
「余り見ないで下さいますか。」
「つれねェな?俺様が態々会いに来たっていうのによ。」
眼を愉快そうに歪めて嗤う彼に、スッと距離を離し、ショットガンを構えた。
ハザマであるはずなのに、矢張り気配だとか口調だとか姿とかが違うから、別人に見えた。
「…で。私に何の用なんですか。
統制機構の人間が犯罪者に対して会いたかった・とだけでは理由になりませんよ。」
「そりゃ逃亡中のヒスイちゃんを迎えに来ただけだぜェ?なんたってゲームなんだろォ?」
迎えに来た・と言う言葉は十中八九裏アリだろう。
そうとしか思えなかったから。
彼から出た『ゲーム』というのは、恐らく先日のお弁当事件。
ハザマではないが、おそらくそのことは知っている。
だがその為に、あの部屋に行くのは…凄く嫌だ。
「…もう戻って弁当作るのはイヤなんで…――――撒きます。」
すぐに叫んでは、ショットガンで空を撃ってはすぐにその場から逃げた。
一瞬驚いたかのようにしてたようにも見えたが、すぐに嗤い声。
あぁ、もう判る。後ろから追っかけていたのだ。
それも、もう。嬉しそうなほどに。
「ヒャハハッ!こりゃ面白ェなオイ!愉しませてくれよ。ヒスイちゃんよォ!」
「ったく…なんで、私が、こう、も…!!」
『同じ人物に追われなきゃならんのだ!』と裏路地で木霊した。
それを後ろから、嘲笑うかのように高嗤って追っていた奇妙な光景が生まれた。
もうひとりの鬼事
(ふざけんじゃないよ!何で…何で!)
(こりゃアイツも愉しむ訳だな。もっと愉しませくれよ。なァ?)
(絶対イヤだ!ハザマよりタチ悪いわ!!)