喰うか喰われるか

あの時から、やたらに機構に絡む事が多くなった気がする。
おかしいな、これでもひっそりと行動してるのに。



「なんでこうも…。」



もうため息ものだ。
まさか追跡でもされているのかと思うほどに、機構関係の人間に絡むのだ。

今だって、衛士に複数追われているし。
予想がつくといえば、あの男のことくらいか。



「ヒスイ=ジハード。貴女を拘束します。」
「…出来るもんならやってみなさいよ。」



スッと懐からカードのデッキを取り出す。
傍から見れば、唯のカードだ。

だけど、これは、紛れもなく。
彼女自身の武器であり、切り札だ。



「但し、アナタ方は機構の衛士だから…。」



組み立て式のショットガンを右手に持つ。
数枚のカードを瞬時に取り出して、銃に弾として装填し、構えた。



「十分の一の手加減しかしないから。
―レクイエム Requiem―。」



空中に銃弾を打ち込み、光の雨のように降り注ぐ。
光線に撃たれたかのように、次々に倒れてく。

ようやくして静寂が取り戻されると、その場を離れようと歩を進めると。
ひとつの気配、いやこの場で言えば殺意と表した方がいいだろうか。

出来る事なら味わいたくなかった気配が、じわりと後ろにあった。
即座に振り向く。



「ククッ、矢張りお強いですねぇ。ヒスイ=ジハード。」
「…アンタは…っ。」



覚えたくもない。というか、会いたくもない相手が此処にいた。
男の名前はハザマ。

前に殺さない代わりにと、唇を奪われた。
私にとっては、抹消したい事実だった。



「こうもあっさり倒されては困りますよ。」
「こんな奴らに構って上げられるほど親切じゃないんで。」



そう放しつつ、距離を離してしまおうと後ろ歩きをした。
だけど、この男の事だ。絶対腹の中ではとんでもないことを考えているに決まってる。



「…で、今度は何をさせたいの?」
「いやね、ヒスイ=ジハードを拘束せよと命は下ってないので手は出しませんよ。」

「嘘を吐くな。どうせロクでもないことを考えているんでしょ。」



前は油断していた訳ではないが、結局あの時は唇を奪われたという認めざると得ない事実がある。
故に、これだけ離れなければならなかった。
すぐにでも、対処出来るように。



「ヒドイ言われようですね。ですが…。」
「!」



一瞬にして、ぞわりとイヤな感覚を感じる。
それは唯で存在する空気ですら、いやな汗を噴出すほどの不快感と捉えるほどに。



「ヒスイ=ジハード。貴女は内側から攻める事にしました。
あぁ、拒否権はありませんから。」



口元を歪めて笑う姿に不気味さを感じ、咄嗟にこの場を離れようとした。
だけど、脚が動かなかった。

最初は唯の恐怖かと思っていたが、脚にぞわりと“何か”が這い上がっている事に気づいた。



「これ、は…!放せ…っ!」
「おや、知りませんでしたか。これは私の能力ですよ。」



鎖かと思ったが、唯の鎖にしてはこの感覚は何処か不気味だ。
その鎖がじわりと腕に絡む。

両腕に絡み、強制的に上に持ち上げられて拘束された。



「ヒスイ=ジハードの恐ろしいところは、自身の持つカードを銃に撃つ能力ですからねェ。
でしたら貴女の腕を封じればいいことでしょう?」



蛇のような鎖で腕を封じられ、ひとつに纏められては動く事が出来ない。
その鎖は徐々に持ち上げられて、とうとう脚がギリギリ宙に浮く。

カツカツと靴を静かに鳴り、ハザマがヒスイに近づいて顎をくいっと持ち上げられた。



「ククッ、腕を封じられてされるが侭というのはどんな気分ですか?」
「…相変わらず、性格が悪い。」



正直捕まりたくもなかった男にされるが侭の状態には、吐き気がした。
するりと頬を撫でる手が気持ち悪くて、そのまま唇を貪るようにキスをする。

抵抗したいが、鎖の所為で抵抗が非常にしづらい。
(こんな事は、したくなかったけど…)

少ししてキスから開放されると、捕まれたままだがキッと睨みつけて。
何かが、キレた。



「だけど…。」
「?」

「私を舐めないで、よ、ね!!」



首を仰け反らせ、思いっきり頭突きをかました。
流石にそんなことを想像してなかったからか、ハザマは直撃を受けた。

その拍子に縛られた腕は解除され、隙に抜ければショットガンを構えた。



「これ以上破廉恥な事したら殴るよ!!」



殴ると彼女が言う割には、少々オーバーなショットガン。
因みに言いながら何発かかましていたが、案の定かわされていた。





喰うか喰われるか
(ククッ、流石にコレばかりは読めませんでしたねェ。)
(ふざけんな!アンタだけは絶対シめる!)