(夢主名前無変換)
少しでも、彼の言葉が知りたい。
普段声を出したがらないけども、こういった手段を知ることで、少しでも判れると思うから。
「えーっと……。これは……こう、で…」
古びた日記のような本を、膝の上でゆっくりとページをめくり、手を指を関節を動かし、確認するようにしていく。
ここ・エルガストルムの街で留守番を任されつつ少し硬めのソファに座る。
自分はここの部屋の住人ではないけれど、主とも面識があり、当の本人は野暮用といって外出してしまっていた。
アレックスさんには『何かいるかしら』と聞かれたけど、お構いなくとにこりと笑ってソファに座って今に至る。
粗方見直せば、次のページをぱらりと開く。
そこはまだ白紙だった。横の端に小さくいくつか単語だけがあっただけだ。
覚えた教えてもらった手話はびっしりと書かれているが、ここには何もなかった。
つまりは、まだ知らない言葉。
ということで、ソファから立ち上がりいるであろう人物の元へと歩く。
「ニック…、ニコラス。」
「?」
『これって…どう、表現、するの?』
わからないことは、本人に聞くことにしていた。
聞きたい言葉は口にして告げて、聞くと気には手話を用いた。
彼には私の声は聞こえないけど、読唇術によってワードは拾えていると思う。
ひとつニコラスが頷けば、目の前で手話を始めてくれた。
動きのひとつひとつ教えてもらったところを、忘れないようにノートに書きこむ。
線や矢印、細かいところまで書いてるから使用されたページは分厚くなっていた。
(よくよく考えたら、ページが少ない…買い足しておかないと。)
「うん…うん。」
見せてもらった動きをひとつひとつノートに記す。
間違ってないか自分の動きで確認してみる。
書き終えるとちらりと見ては教えてもらった手話が間違ってないか、ニコラスに確認を取ってもらうことにする。
書いた箇所を見ながら、間違いがないかひとつひとつ丁寧に。
「ニコラス。これで、あってる…?」
「……。」
目の前で見せて間違ってないか確認をするため、ゆっくりとひとつひとつ動作を動かしてみる。
(じぃっとこちらを見てくる…手元を見ているんだし、慣れてるけど……。)
「これで、大丈夫……?」
「……。」
何も言わないためにもう一度聞いて小さく首を傾げていると、スッと手が伸びては手を取られる。
大きくて、男らしい骨張ったごつごつとしたニコラスの手。
触れられながらそう思うと、どうしても、顔の熱が上がってしまうもので。
「え、…ぁ……ちょ、っと…。」
「…。」
ひとの言葉にも聞かずに、無言のまま指摘を受けることになる。
流石に触れられることは時折しかなかったから、こればかりはドキドキする。
(い、意識してしまう…このままでは、マズい……。)
指の隙間、間接まで触れられるとどうしても…どうしても、意識してしまう。
(別に彼がタグ付だからとかの恐怖とか、そういったものじゃなくて、その、)
『終わったぞ。』
手が離れてそう手話で返されれば、ハッと我に返りもう一度確かめるように繰り返す。
そうすれば、こくりと小さく頷いてくれたので、間違ってらしく安心する。
(し、しかし…ほんの数秒とはいえ…意識してしまった…私のバカバカバカ…!)
そうだ、早く鎮静化させてしまおうと一息つく。
すると、なぜかこちらを見ては、こちらに手を伸ばす。
「……。」
「ふぇ?!に、ニコラス……?」
「顔、赤いぜ?熱か?」
「!!!」
久々に聞く、ニコラスの声。
少し不明瞭な彼の声がより現実味を帯びて、一気に熱が上がったような気がした。
手が伸びていたことに気づいていたいのに時すでに遅し。
既に大きな手が額にぴたりと当たり、熱を測るような仕草に爆発したように熱が急上昇。
必死に熱を冷ますのに、手一杯になってしまったために、メモするのを忘れてしまったのだけど。
更にこの後、まさか、渾身のノートを奪われるとは思いもしなかった。
最初からやり直し
(に、ニコラス…お願い…、ノート返して……!!)
〔ここも違う。また一から手取り足取り教えてやろうか?〕
(いやいやいや!なんでそうなるの…!?ってか、ホントにノート返して…!)