(※【最初からやり直し】の続き/引き続き名前無変換)
数日も数か月も書きこんだノートを、最初からやり直しだと一蹴した挙句、あろうことかノートを奪われてしまった。
結局その日に奪取することは叶わなかった。
(今思えば色々書いたのになぁ……。)
書いたことを思い出しながらも、取りあえず返してもらいたいためにもう一度あの場所に向かった。
扉を開けたらウォリックがお迎えしてくれて『今日はどうしたの?』なんて聞かれたので、にこりと笑っては『借り物を返してもらいに』と笑いかけた。
早速奪われたものを取り返すために当の本人に会いに行く。
(下に降りるときに、ウォリックから何か言っていた気がするけど……早く返してもらいたい!)
「ニコラス!どこ?……って、あれ……?」
何もないと籠って鍛えていることは知っていたから向かっていたものの、当の本人は不在だった。
下の階にいるとウォリックは言っていたため、いるとしたらここだ。
いつも鍛えるときはこの部屋を使っていたのは知っていたために、あたりを探していると、
「……。」
「………え… !!!!」
いた。丁度鉢合わせしてしまった。シャワーから上がりたてのニコラスと。
幸い履いてはいたものの、鍛え上げられた体とか、あちらこちらに見える傷はちらちら見えてしまうもので…もので……。
気づけば、二・三歩後退りしていた。
「……。」
「ちょ、ま、待って……!!別に、どういうこと、じゃなくて……!!」
『来てたのか。どうした。』
至って何にも驚かない彼。
いや、ニコラスは十分な大人なんだし、余裕くらいはあるのだろうけども。
いやいや、私はアポなしに突然やってきたんだけども。
いやいやいや、こっちが勝手に熱が上がってしまっただけなんだけども、
心の準備的なモノをしていなかった今の自分には大変心臓に悪いです。
しかし、さらっと流してくれる辺りがニコラスは親切だと思う。基本意地悪だけど。
ハッと我に返れば、さがった歩数を元に戻し、手を差し出す。返してほしいものを返してほしくて。
「!!どうした…じゃなくて、ノート!昨日の私のノート、返して…!」
『あんな間違いだらけのか?』
「っ、それでも大事なものなの!」
元はと言えば、ニコラスの手話を知りたかったから。
彼には聴力はないのだけども、コミュニケーション手段として手話を覚えることにした。
本があれば本当はベストだったのだけど、折角だからと色々聞いては必死に書きこんだメモだ。
たとえ乱雑で間違いがあったとしても、話をしたい。その思いから始まった代物に偽りはない。
「……。」
無言のままニコラスはシャツで髪をふきつつ、そのまま近くにあったテーブルの上にあったものを私によこした。
少し距離は離れていたとはいえ、ぽいっと投げられたものを慌てて受け取ると手元にあったのは三冊の本。
ひとつは見慣れた古びたノート。これは今日の私の目的。私が取り返したかったもの。
もうひとつは、見慣れない新しいノート。最後の一冊は、手話の本。
「これ、は……?」
『本は一冊しかないから、これからはそれを見て覚えろ。』
『持ち帰るなよ。』と続けては、冷蔵庫に入っていた炭酸水を取りだしてはそのまま飲んだ。
その光景をぽかんと見つつ、なんのことか理解に少し遅れた。
……あぁ、……つまり……。
「勉強しなおせ、ってことね。ニコラス。」
ようやく理解すると小さく頷いた。ぽいっとひとつのビンを一緒に渡されて。
(あ……、でも…私炭酸は…ちょっと…。)
続けたことに意味があったことには安心したけども、ニコラスは私には基本意地悪さんである。
ノートに書きこんだとしても実践込までされたのは、言うまでもありませんでした。
始めたのなら最後まで
(ちょ!ちょっと…なんで、こんな……)
〔手取り足取り教えるといったからには、責任は必要だろ?なぁ?〕
(いやいやいや!今日ノート返して欲しかっただけなのに…!)