突然はじまる

糸みたいに真っ直ぐな日の光を浴びると一層煌めく長い金髪が揺れるたびに、心臓が鷲掴みされたような気分になる。とにかく日常生活は危険で一杯だった。昔から猪突猛進という四字熟語がピッタリだと笑われるほどに単純で、内心隊長にドキドキしながらそつなく隊務をこなすことができるようなできた女ではないのを自分が一番よく分かっていた。とにかく慎重に、隊長の目が届かないところで、それでも五番隊士でいられるようにすることで精一杯で、けれどそんなことしなくたって隊長の視界にわたしが入ることなんてないんだろう。

と、思っていたのにたやすく切れ長の明るいブラウンはわたしを射抜くように見つめたりするから泣きそうになってしまった。どうして、は声にならなかった。

「なァ、なまえ言うたっけ」
「あ、はい!何、でしょうか平子隊長」
「そんな堅ァならんでもええって。・・・えーと、それより今日、時間あるか?」
「・・・は、えっ、と、」

もうこの時点でキャパシティを大幅にオーバーしていたのだ。エンジンで言えばクラッシュだろうか、なんてことを回らない頭は考えているのだ、笑えもしない。

「た、隊務が終了した後、ということでしょうか?」
「おーそやな、俺はどっちでもええねんけど・・・・あー、惣右介がうるさくて叶わんし、そっちのほうがええかな、まあホンマはいつでもええんやけど」

いつもカラッとした晴天を思わせる小気味良くてテンポの言い喋り口である隊長が、今日はいやに口が重たく、もったいぶるようであることにそこで気付く。わたしへの用というのは、言いづらいことなのだ。そして良いことでことではないのだろう、多分。思わず後ずさりをしてしまう。異動命令とかだったら、と考えてしまった瞬間それにしか考えられなくなってしまう。じわり、と目頭が熱くなるのを感じて、隊長に見られないように慌てて俯いた。しかしそれに隊長はすぐ気付いてしまったのか、こちらを訝しげに見つめている。顔が火照ってゆくのがわかるほど恥ずかしい。

「?、どしたん」
「あ、いや、ちょっと、」

タイムでお願いします!

自分でもわけがわからぬ叫びを残して瞬歩で逃げ出してしまっていた。隊舎内で瞬歩をする馬鹿はそうそういないので、すれ違った隊士たちがびくっと肩を震わせるのを申し訳なく思いながら、自分でも説明のできない感情に振り回されて脇目も振らず五番隊舎を飛び出す。途端、視界が真っ黒に覆われた。やばい、ぶつかると思った時にはもう遅かった。

「うおッ!びっくりした〜、ってなんだなまえかよ」
「え、あ、海燕さん・・・!」
「・・・ちょっとこっち来い!な!」
「うええ?」


-meteo-