思い出の世界

ヘッドとグラウクローネの2人は、サイバディと電気棺のある場所へと向かう。

現在世界は止まっている。
所謂零時間という奴だ。

「ヘーゲントを動かしてるみたいだな」

「―誰の思い出の世界なのかしらね…」

「さぁな。だがどちらにしても、今世界には銀河美少年と、皆水の巫女の2人。利用できる物は最大限に利用させて貰う」

設置されている電気棺の中にいたのはスガタメ・タイガーだった。

「…」―タイガーの思い出の世界か。

「手緩いな」

ヘッドが言う。

「今なら銀河美少年を倒せる」

そう言うとタイガーに跨る。

「まさかこの子を戦わせるつもり…?」

イヴローニュは驚いた様に顔をあげる。
ヘッドはタイガーの頬に触れる。


「ほぅら、見てごらん。君の幸せを邪魔する者がいるよ?」


「…気付いた様ね」

イヴローニュの反対側に腰掛けながら、グラウクローネは呟く。

―そう…目に見えないだけで、タウバーンは既にそこにあった。

イヴローニュはタイガーの首から疑似印の刻まれた首輪を外す。

「…あのまま戦わせてみれば良かったのに。案外、面白い戦いが見れたかも知れない」

グラウクローネは口端をあげると、手の甲でタイガーの頬を撫でる。

「…」

「この子にサイバディの戦いは無理。この子はただの、恋する乙女なの…」

「まぁ、兎に角…」

ヘッドは気にした様子も無く、立ち上がる。

「今回の君の作戦は成功したようだね」

「…」


「行こうか、グラウクローネ。今回はこれ以上は期待できない」

「そうね」

「…」

イヴローニュは黙って2人の後ろ姿を見る。


「…君の思い出の世界は、どんな景色が広がっているんだろうな。グラウクローネ」

サイバディが消え、色を取り戻した世界で、不意にヘッドが問う。
グラウクローネは馬鹿らしいとでも言いたげに、小さく笑う。

「思い出じゃないわ。私が何も知らなかった頃の、偽物の世界よ」

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