夏の影と陽
89.「それで、陽は……?」
ミツキが、ぽつりと呟くように言った。
「陽の受けた、罰って……? 一体、何なの? 陽は……、今の陽は、大丈夫なの?」
心配そうな目で、俺を見つめてくる。
真っ直ぐな瞳は、俺を離さない。
……なぁ。
なぁ、ミツキ。
あのさ。
「どうしてそんな、悲しい顔をするんだよ」
どうしてそんな、泣きそうな顔になるんだよ。
はっとしたように、自分の顔に手を這わせるミツキ。
なぁ、どうしてだよ。
どうしてだよ。
俺は、罪を犯した、罪人だぞ。
追手から逃げて来た、逃亡者だぞ。
逃げる為にお前を利用した、悪人だぞ。
どうして、そんな風になるんだよ。
何がそんなに、悲しいんだよ。
教えてくれよ。
俺はお前を
「どうすればいいんだよ」
ミツキの肩を寄せて、腕の中へ包み込む。
不意に抱きついた俺を、ミツキは黙って受け入れてくれた。
なあ、どうすればいい?
全てを打ち明けても、ミツキはこんなにも優しいんだ。
このまま抱き締めていたら、俺は、きっと駄目になってしまう。
このまま抱き締めていたら、俺は、ミツキの優しさを、全部、全部、吸い尽くしてしまう。
俺はまた、罪を犯してしまうのか。
この気持ちは、一体何なんだろう?
どうしたらいいのか、分からない。
どうしたらいいのか、分からない。
なあ、どうすればいいと思う?
夏の夜の、暗い闇。
いっそのことその果てしない腹の中に、俺を引きずり込んでくれないか。
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