夏の夜の下

 100.

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フキヨセカーゴサービスを利用して到着した町、ヤマジタウン。
比較的小さなこの町の特徴は、何といっても土で作られた建築物が建ち並ぶところだろう。
標高が高く、また草木の少ないこの土地は、昼夜で気温の寒暖差が著しい。
特に真夏のこの時期は、昼間は灼熱の太陽が大地を照り付け、夜は冷え切った大地がこの空気をも冷たくさせる。
そんな気候の中でこの土造りの建物は、一定の室温を保つのに最適なのだという。
西部劇の中にいるみたい、とミツキは言っていたけれど、そこは一体、どんなところなんだろう。

ハヤタと別れた後、俺たちはすぐにフキヨセ空港へと向かった。
早くこの地から離れたい、という俺の願望を、ミツキは分かっている様だった。
初めて経験する空の旅は、あっという間だった。
雲の上まで行った事なんて今まで一度も無かった俺は、ひたすら空の高さと青さに驚いていた。
ちょっとドキドキしたけど、なかなか面白かった。
多忙なフウロの操縦とはいかず、ミツキは残念そうにしていたが、俺はまあ良かったんじゃないかな、と思っている。
不安だろ。色々と。

そうして今、俺たちはヤマジタウンのポケモンセンターにいる。
空が夜を迎え、すっかり冷えた外気から身を守るように、旅人たちが身を寄せる。
そんな中、ミツキがぼんやりと考えふけっていた俺へ、不意に声を掛けた。

「外へ出てみない?」

「え……?」

言うや否や、ミツキは俺の手を引いてポケモンセンターのバルコニーへと飛び出した。
外へ出た途端、夏とは思えないほどの冷気が俺たちを包み込む。
ミツキは全く気にしていない様だったけれど、俺を掴む細い手は、ひんやりと冷たい。
どうして急に、こんな所へ。
尋ねようと思ったけれど、ミツキがあまりにも強く俺の手を掴むもんだから、なんだか訊き辛かった。

「ふふ、寒いわね」

「……」

何故か嬉しそうに話すミツキに、俺はなんて返せばいいのか、よく分からなかった。
寒いなら、中に入ってた方が良いんじゃないか……?
言おうかどうか考えていると、ミツキはまたぐいぐいと俺の手を引っ張り、こう言った。

「ねえ、ちょっとお散歩しましょう?」

「……」

「町のはずれはここよりも暗いだろうから、きっと、星が綺麗に見えるわ」

ミツキが笑った。
俺はまた、なんて返せばいいのか、よく分からなかった。


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