夏の夢の家

 119.

がたん。

随分と古めかしい玄関扉を開け放つと、室内の埃が舞い上がった。
外見から相当でかい屋敷だとは思っていたが、中に入るとより広く見える。
一階と二階は吹き抜けのロビーになっていて、いくつかの個室の戸も、ここから確認できる。
ミツキは一体、どこにいるんだ……?

「……なんだか、不気味なところですね」

続けて入って来たタブンネが、ぽつりと呟いた。
……確かに、外は気持ちいいぐらい晴れてるし、日はとっくに高くなっている。
もう少し明るくてもいいのにな。
ここはやけに薄暗いし、何だか涼し過ぎる様な気がする。

「こんな所に、ミツキは一人でいるかもしれねえんだ。早く探さねえと……」

「はい。頑張りましょう」

気合いを入れるように、小さな拳をぐっと握るタブンネ。
それと同時に、耳についてる触角のような何かが、くるくると丸まった。
俺たち普通の手持ちポケモンとは違い、ポケモンセンターのタブンネは、人の姿にならないらしい。
どうしてなのかは、俺もよく分かんねえけど。

タブンネはあの映像を見た後、俺がミツキを探しに行くと伝えると、心配だからと言ってついて来た。
正直、別に助けなんていらないって思ったけど、最悪、俺もこの事件に巻き込まれるかもしれないからな……。
俺もタブンネも、GPS機能のついたライブキャスターをそれぞれ持ってきている。
もし俺たちまでもが行方不明なんかになってしまっても、居場所はポケモンセンターのジョーイさんに伝えることが出来る。
……流石にそこまでの事態になったら、ジュンサーさんへ連絡すると、ジョーイさんからは強く言われてしまった。
いや、まあいいんだけどな。うん。

「じゃあ、まずは片っ端から部屋を開けてくか……」

「あ、ちょ、ちょっと陽さん……!」

もう少し慎重に……、とタブンネは俺を制止させようとする。
まったく、びびり過ぎだって……。
大体、何に慎重になればいいんだよ。
ドアノブに手を掛けたまま、振り返る。

「え…」

そこに、タブンネの姿は見えなかった。

「こんにちは。あかいかみのおにいちゃん」

代わりに見えたのは、朱い、大きな瞳だった。

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