夏の夢の家

 118.

「な、何……?」

突然の物音に、身体が硬直する。
何だろう……。上の階からだ。

「……」

少年は何も言わずに、上を見上げた。
そのまましばらく黙っていたかと思うと、小さく、あーあ、と言った。
あーあ、って……?

「あ、あの……?」

「ばれちゃった」

振り向いて、少年は笑った。
どうしてだろう。
さっきから、この少年の一挙一動に心がざわついてしまう。
子どもの笑顔を見て、こんなに不安な気持ちになってしまうなんて。
私、どうかしちゃったのかしら……。

「ばれちゃった、って……?」

「ねえ、おねえちゃん」

「え、うん? なに?」

尋ねると、少年が両手を大きく広げ、楽しそうに話し出した。

「ぼく、おねえちゃんと、ずっと、ずぅっと、いっしょにいたいんだ。ねえ、いいでしょう?」

「え……?」

「もっともっと、えほんをよんで、それから、いろんなところに、いっしょにいこう。おいしいものをたくさんたべて、いっぱい、いーっぱい、あそぼうよ」

「え、えっと。そうね……」

ど、どうしよう……。
ついて来てもらう分には、一向に構わないのだが、果たして少年が言うように、沢山遊んであげられるかどうか……。
それに、陽は……

「だから、おにいちゃんはもう、いらないよね」

「……え?」

今、なんて……?

「おにいちゃんとは、いっぱい、いっぱいあそんだんでしょう? だから、つぎはぼくのばん。だから、あのおにいちゃんは、もういらないよね。……ぼくが、おいはらってあげる」

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