夢の前で

 T.

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「ちょっとエルちゃん、なに突っ立ってるのよ。早くしなさい」

「え、いやその、しかし……」

「ちょっと! まさかあなた、今になって怖くなったんじゃないでしょうね!」

「な、そ、そんなこと……! しかし、人間が作った物を使って、夢の中に入るなんて……。うう……」

「情けないわね……! ほんっと、オスの癖に情けないわね!! 根性見せなさいよ! 根性!!」

「あ、あの。アニィ様は、その……恐ろしくないのですか……? 人間の手によって、創り上げられたものが……。我々の能力を上回る、絶対的な力が……」

「あなた、まだそんなこと言ってるの! 怖くないわよ! 弱虫!」

「う、うう……」

「私はね、力を持った全ての者が強いわけじゃないってことを、よく知ってるわ!」

「……え?」

「弱い者が力を求めて頼ろうとすることも、よく知ってるわ!」

「え? ……は?」

「同じ力でも、使う者によって生み出すものと失うものが違うの! あなたが知っているのは、弱い者の話よ!!」

「あ、アニィ様……? つまりは、どういう……」

「つべこべ言わずにさっさと来なさいって言ってんの!!」

「は、はいぃ!!」

「……はぁ。大丈夫よ。あんただけじゃない。私がいるし……、カルネちゃんのお家の、礼(アヤ)ちゃんだって一緒よ。安心しなさい」

「アニィ様……。あ、ありが」

「ま、せいぜい置いてけぼりにされないよう、気を付けることね」

「ううう……」

「それじゃあ、行くわよ。……夢の世界ね……。一体、どんなところなのかしら?」

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