夏の海と君

 130.

どうしたの?
そう尋ねるまでもなく、私はその視線の先に気が付いた。
そこには、見事な銀髪の髪を揺らせる女性が、静かに佇んでいた。
その向こうには、明るい陽の光が差し込む大穴がある。……出口だ。
女性は、私達に気付いていない。
何をしているのか分からないが、ただ静かに、明後日の方向を向いている。

「……なにしてるんだろうね」

私の後ろにしがみつく少年が、ぽつりと呟く。
確かに、何をしているんだろう……。
そこには洞窟の壁が広がるばかりで、何も無いというのに。

話し掛けようと、相手に近付く。
近付いてみて分かったのだが、彼女は両目を覆う様な、とても大きな包帯をしていた。
赤い丸の模様が付いた、日の丸の国旗の様な包帯だ。
目は、見えていないのだろうか……。
そんな事を考えていると、彼女は私達に気が付いた様で、こちらへ振り向いた。
洞窟内でも分かるほど、血色の悪い肌をしている。
すると、

「あ」

何かに気付いた様に、声をあげた。
そして。

「……あっ、おい。どこ行くんだ!」

颯爽と、彼女はどこかへ走り去ってしまった。
……とても、目の見えない人の動きには見えなかった。

「なんだったんだ……?」

茫然とする皆と、顔を見合わせる。
一体、どうしたというのだろう……?
彼女の真相を知る者は今、この場に居ない。
ただ、外から差し込むまばゆい光が、私達を迎え入れようとしているだけだった。


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