夏の海と君
139.近くを泳いで遊んでいたシズイさんのポケモン達が、慌てて傍から離れていく。
海上から無理矢理引きずり出された私達の身体から滴り落ちる水が、海にぱしゃぱしゃと音を立てている。
こ、これは一体……?
「カトレアさんの仕業ですねー。もう、びっくりしちゃうじゃないですか」
「すったいたまげたなぁー」
冷静に腕を組んで、文句を述べるシキミさんに、わざとくるくると宙返りをするシズイさん。
……慣れるコツがあるのだったら、ぜひ私にも教えてほしい。
何だか私だけ、まだ逆さまになったままなのだけれど。
は、恥ずかしい……。
「あははっ、ミツキ、またひっくり返ってんのかー!」
「おねえちゃん、だいじょうぶー?」
「わーい! 大成功ーっ!」
陽と智秋くん、それにアイリスさんが、ばしゃばしゃとこちらに近寄って来る。
三人共、とてもいい笑顔だ……。逆さまだけど。
「カトレアお姉ちゃんに、協力してもらったのーっ!」
おーい! と海岸に向かって手を振るアイリスさん。
その先へ目を向けると、なるほど。素敵な微笑みをたたえたまま、両手でピースサインを送るカトレアさんと、そのポケモン達が。
「まだあるんだよー!」
「まだあるのかよ……」
「いいでしょーレンブお兄ちゃん! はいっ、ボールにご注目くださーい!」
アイリスさんの掛け声と共に、先程から私達と一緒に浮いていたバレーボールが、光り出す。
その光は一瞬で収まり、いつの間にかその模様が変わっていた。
何だろう、モンスターボール、みたいな……?
「えっ。ちょ、ちょっと! ビリリダマですか!?」
珍しく、慌てた様子のシキミさん。
……どうしたのだろう。
レンブさんとシズイさんも、息をのんでいるのが分かる。
「いっくよー! さん、にぃ、いちー!」
どーん! という、アイリスさんの掛け声。
すると、
「きゃあー!!」
「んなああーっ」
ぱんっ! とボールがはじけ、中から大量の水が飛び出した。
何が起こるか分からず、身構えてはいたものの、あまりの衝撃と冷たさに驚いてしまう。
「やったー! だい、だい、大成功だよー!」
ぱちんぱちんと、笑顔でハイタッチをする三人。
その三人を厳しいまなざしで見つめる、海上二メートルの強豪達の存在を、彼等はまだ、気付いていない。
……私、知らないからね。
そんな冷たい視線を彼等に送った直後、身体に、次なる衝撃が。
「え!?」
がく、と身体が揺れた。
お、落ちる……!?
「くそ、カトレアの奴!! 飽きたな!?」
そうレンブさんが叫んだのを最後に、私達は急下降し、海へと落ちた。
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