夏の海と君

 138.

「がははははっ! じゃあお前はあれか。本当に何も関係ねえ一般トレーナーだったのか!」

「だ、だから! さっきからそう言ってるじゃないですか!」

豪快に笑うレンブさんからボールを受け取り、ぽん、とバレーボールを返す。
腰まで海水に浸かっているため多少の動きずらさはあるが、今の私には全く問題ない。
やわらかい冷たい砂が、素足に染み込む感覚が心地良い。
安心するなあ、と、しみじみ思う。

結局、シキミさんと私のチームは激戦の末、彼等のチームに負けてしまった。
私はほとんど力になれなかったのだが、夢中になっていたことに変わりは無いため、負けてしまった事がとても悔しい。
オーディエンスの方は、パワー型VSテクニック型の対決だと、随分楽しんでくれた様子だった。
……何はともあれ、何事も無くあのゲームが終わって良かった。

ほっと胸を撫で下ろしたのもつかの間。
今度は、陽のことをゾロアークだと気付いたイッシュリーグのチャンピオン、アイリスさんが、また別のゲームを考え付いたなどと言い出し、陽を連れてどこかへ行ってしまったのだ。
因みに、私達に水着を貸してくれたのは彼女らしく、まあ、断るにも断れないだろう。
何でもこれから、イリュージョンを使って参加者全員に悪戯を仕掛けるつもりなのだとか。
誘われた智秋くんも随分とノリノリだったが、三人共、大丈夫だろうか……。
そもそも悪戯と謳っている時点で、それはゲームでも何でも無いと思うのだが。

「あー……。ダンナさーが心配なんけ?」

私のボールを受け取ったシズイさんが、上手にシキミさんの方へと返す。
だ、だんなさー、とは……。

「ああミツキさん、ごめんなさい。アイリスさんもつい、はしゃいじゃってるんです。普段はもう少し、落ち着きのある子なんですが、久々の休暇なので……。大丈夫ですよ、今日はここにご祖父様のシャガさんもいらっしゃいますし、羽目を外し過ぎることも無いですよ」

私へとボールをパスするシキミさんに、そういうものなのだろうか…と首を傾げる。
少し高く上がったボールを受けるため、私は自分の腕を大きく上げた。
しかし、次の瞬間

「き、きゃああああ!!」

「なんだあぁ!?」

急に私達の身体が、宙に浮かび上がった。
で、デジャヴ……。
また、逆さまだ。


prev / next

[ back ]