夢の前で b

 V.

*****

「なるほど。ピスカには一人、人間の女の子が連れ添っている、と……?」

「ええ。ピスカの、トレーナーとなっている可能性もあるかと」

「……そう」

「……」

「ああ、ごめんなさい。ご苦労様、礼。ゆっくり休んで頂戴」

「いえ、私なら大丈夫です。……しかし、どうするおつもりですか、カルネ?」

「……」

「カルネ?」

「……礼。さっきね、マコモさんと話していたのだけれど……」

「はい」

「貴女のトレースの能力を使って、私の精神を貴女の身体に移そうと思うの。それは、出来るわよね?」

「ええ。……それで、どうするおつもりですか?」

「……分かっているくせに訊くのね」

「ええ」

「……。貴女と私の精神をトレースしたまま、私もピスカの夢の世界へ行くわ」

「また無茶な事を」

「止めないのね」

「まだ止めようとしていませんし、止めても止めないでしょう」

「……そうね」

「マコモさんからは、了承を得たのですか?」

「ええ。この案は、彼女と私で考えたんだもの。危険だけれど、やるしかないわ」

「……やはり、危険なのですね」

「ええ。人間とポケモンでは、眠った時の脳の周波数が違うとか何とか……。……まあ、私にはよく分からないわ。ただ、少し精神や記憶に障害が残る可能性があるらしいの」

「ならば、諸手を挙げて賛成することは出来ません」

「それでも、やるしかないのよ」

「……なぜですか」

「それ以上に危険な状態にある人が居るからよ」

「……? それって……」

「ピスカと一緒に居たっていう、人間の女の子よ」


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