夏に遭う時

 169.

「私の名前は、零といいます。ナガアキが、名付けてくれました」

「……」

「以前は、ここイッシュ地方から遠く離れた、古い研究施設で、ナンバー×××××、と呼ばれていました。……私と貴方は、似ている様な気がします。……そして、ナガアキとも」

そう微笑み掛けると、彼は少し目を大きく開いて、意外そうな表情でこちらを見ました。
ナガアキの咳払いが聞こえて、しばらく時間が経った後。
ゾロアークさんは俯いたまま、小さく掠れた声で、私達に話し始めました。

「……俺の名前は、陽だ……。ミツキが、名付けてくれたんだ……」

「……はい」

「昔の俺は、ピスカっていう名前で……、俺は、この名前が、嫌いで……」

「はい」

「だから、ミツキにお願いしたんだ。俺に、新しい名前をつけてくれって……。だから、こうして名前をくれたんだ。新しい、違う名前を……。でも、ミツキは、……ミツキは……」

「……」

「ミツキは、ピスカである俺も、大切にしようとしてくれたんだ。ピスカっていう存在も、俺だから、って……」

「……はい」

「だから俺は、陽だけど、ピスカでもある。……どちらで呼んでくれても、構わない」

「……そうですか。では」

「あ、でも」

彼の瞳が、優しく光りました。

「陽って呼んでくれた方が、俺は嬉しいかな」

「……ええ、そんなこと」

分かっていますよ。
そう返すと、彼は笑って応えました。
小さな太陽が、笑っている様でした。


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