夏の夜と彼

 1.

夜風が心地良い。
そんな事を思うのは、きっと良くない出来事があった後だ。そう思う。
他の誰かはそんな事は無いと言うかもしれないけれど、少なくとも今の私はそうだ。

煤けた生ぬるい風が私を包んでいく。
夜が私を飲み込んでいく。
深く、深く飲み込まれ、溶かされ、消化される。
一思いに消し去ってくれればいいのに。そう思う。

そんな時だった。私が彼と出会ったのは。


prev / next

[ back ]