夏の夢の中で
CLXXXIX.「考える時間をください。そう言っています……」
「……え? ええ、構いませんよ。ただし、」
「ただし、あまり長い時間は待てない……、ですか?」
「……ええ、そうですよ。何せ、貴女方の命が掛かっていますから」
「それに関しては、本当に、感謝しています……。私達の心配を、見ず知らずの方たちがこんなにも心配して下さっていること、とても嬉しいですし、同時に申し訳なく思っています。でも……」
「でも……?」
「私の中で、まだ、気持ちの整理が……、出来ていません……」
「……それは、そうでしょうとも。もちろん私達はその事も考慮して、貴女方を」
「だから、お願いがあります」
「え?」
「しばらくの間、私に考える時間をください。そして陽には……、ピスカには、このことを、絶対に話さないで」
「……はい?」
「陽にはこんなこと、知ってほしくありません。陽は、自分が今でも罰を受け続けているだなんて、思っていません。ずっと森の追手から、逃げ続けていると思っているんです。……そんな中、私は彼と出会った……。私が帰る方法を、陽は、一緒に探してくれるって言ってくれたんです。でも、私がこの世界に来たそもそもの理由が、自分だったなんて……、そんなこと、陽が知ってどう思うか……。ただでさえ、陽は私を巻き込んでしまったと思っていて、自分に負い目を感じているんです。だから……」
「けれど、だからこそ、早くこのことを彼に教えてあげるべきなんじゃないですか? 本来在るべき自分を、再認識させるべきなのではないですか?」
「もちろん、それは最も重要なことだと、私も思います。でも……」
「でも……、何ですか?」
「でも、ピスカがもし、目覚めたとして……。ピスカはその後、無事に生きていけるのですか? ……先程、貴女は言いましたよね。ピスカは今、悪夢をみるという罰の為に、無理矢理生かされているのだと。もしそれが本当なら、私達が目覚めた時、ピスカは……、罰を終えたピスカは、無事に、生きていけるのですか? 何千年も眠るために生かされた生き物が、その後も健康に、生きていけるのですか……?」
「……それは…………」
「だから、選べる選択肢は、残しておきたいんです……」
「選べる、……選択肢?」
「陽は何も知らずに、私も何も知らないふりを、して、このまま、この世界で……」
「ミツキさん、それは……!」
「分かっています! 分かって……」
「いいえ。貴女の言いたいことはよく分かる。けれど貴女は全てを分かっていない。理解しようとしていない」
「違う、違う!! 私は……!」
「貴女はまだ混乱しているわ。新しい情報に、ただ翻弄されているだけ。……可哀想に。けれどまあ、無理もないでしょう。取り敢えずは、貴女も落ち着いて、」
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