夏に残る風
200.「陽、見てみて! 羊がいっぱい居るわ!」
高く昇った太陽の下、歩きながら考えごとをしていた俺は、突然聞こえてきたミツキの声に意識を引き戻される。
え、ひつじ?
「あっ、待って。羊じゃなくって、えーっと、えーっと……、これ! メリープね!」
ミツキは持っていたライブキャスターを俺に見せ、そこに載っているポケモンの情報を指差した。
ここ二十番道路の外れに位置するサンギ牧場には、広大な土地を利用して沢山のポケモンが飼育されている。
この牧場ではメリープを主に飼育しているらしく、道路に立っていてもあちこちに居るメリープの姿を見ることができる。
定期的に毛刈りショーやハーデリアレースっていうイベントをやっているみたいだけど、今の時間は何もない様で、メリープ達は思い思いの場所でくつろいでいた。
ミツキはメリープが入っている牧場の柵に、駆けて寄って行く。
って、そんな不用心に近付くなよ……。
「もふもふ、可愛い……! 触ってもいいかしら」
「駄目だぞミツキ。メリープは静電気っていう特性があるからな」
「びりびりしちゃう?」
「びりびりしちゃう」
「なーんだ、残念」
そう言って、残念そうに柵から離れていくミツキ。
なんだ、メリープはもういいのか。
案外あっさりと退いたな。
心なしか、ミツキの足取りはいつもより早い気がする。
そんなに花火が楽しみなのか。
高い太陽に、薄い雲が掛かる。
俺は軽快に歩いていくミツキの後を追った。
足元に吹いた風がなんとなく涼しく感じたのは、この頃からだった。
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