夏に残る風
201.ヒオウギシティのサマーフェスティバルへは隣町であるサンギタウンの住民も多く参加するらしく、そのチラシは町の至る所に貼ってあった。
ポケモンセンターの掲示板、何かの店の窓、電柱、民家の壁……。
そのチラシにはあのライブキャスターに載っていた写真と同様、夜空に浮かぶ光の輪っかが描かれている。
近年始まったばかりのこの祭りは、地方の街にしてはかなり大々的なもので、イッシュ地方の中でも有名な催し物らしい。
今からゆっくり行っても花火が始まる時間には充分間に合うんだけど、ミツキは早くヒオウギシティへ行きたいのだという。
どうしてそんなに急いでるんだって訊くと、何でも花火が始まる前までに祭りの屋台を見て回りたいんだとか。
それってそんなに大事なことなのかって訊くと、雰囲気が大事なのよ、と笑いながら返されてしまった。そういうもんか。
サンギタウンを足早に抜け十九番道路へ出ると、新人トレーナーの数が一気に多くなった。
ヒオウギシティにあるという、トレーナーズスクールの生徒だろう。
俺の赤い髪を見ては果敢に勝負を挑んでくる。
ミツキはその誘いを次々と断り、先を急いでいく。
バトル、一回ぐらいやってもいいのになあ。ちぇ。
ヒオウギシティへ近付くと、だんだんと軽快な音楽が聞こえてきた。
時刻はまだ昼過ぎだったけれど、もうすでに祭りは始まっているらしい。
「うわぁー、素敵! 陽、早く行きましょ!」
ミツキが俺の手を引いて、走り出す。
俺は躓きそうになるのを何とかこらえて、一緒に走った。
俺はまた、ミツキに何かを言いたかったんだけど、それはまだ胸の奥につっかえたまま、声に出せずにいた。
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