森の中で
A.*****
「……ネアス様、ゼルネアス様」
「…その呼び方は止めて頂けませんか、エル」
「えっ。で、ですが…」
「前にも申したはずですよ」
「あ、いえ、申し訳ございません。…しかし、周りの者も皆そう呼び親しんでおりますゆえ…」
「私は、以前の者とは異なる存在なのですよ。あまり仰々しい呼び方や話し方は、控えて頂けると嬉しいのですが…」
「そういう訳にはいきません…。それに、ワタクシだけが急にその様に話すのも、おかしな事でございます。お許しくださいませ」
「はぁ、まあ良いでしょう」
「ご希望に添えられず、申し訳ありません」
「いえ、気になさらないでください。私の、我儘ですから。それより、何かご用でしたか?」
「はい。例の者の件なのですが…」
「ああ、彼の。どうですか、彼の容態は」
「いえ、それが……」
「…芳しくないのですか?」
「それが、はっきりとは申し上げにくいのです」
「どういうことですか?」
「あの者の身体は、確実に衰弱しつつあります。現在もなお、続いております。しかし、徐々に、非常に遅いペースで、です」
「……具体的には?」
「それは、ワタクシにも詳しい事は分かりません。ただ、そういうことに精通している者が、そう申しておりました」
「なるほど。しかし、彼の生命が脅かされる心配はしばらくの間ないという事は、信用してもよろしいのですね?」
「ええ。元々このような昏睡状態を長期間の間……無期限で続けていたという事実もありますし、眠り続けること自体は身体の衰弱とあまり影響は無いものだと考えられます」
「…そうですか」
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