森の中で
B.「……彼を目覚めさせる方法は、見つかったのですか?」
「いえ、ありとあらゆる方法を試みましたが、全く効果が表れません。瞼も爪も体毛も、ピクリとも動きません」
「ありとあらゆる……。手荒な真似は、していないでしょうね?」
「そんな、もちろんでございます」
「そうですか。ならば、良いのですが」
「ワタクシ達は、人間の道具も使用したのですよ? ああ…、なんておぞましい」
「お止めなさい、エル」
「しかし……」
「人間を敵視する考えは、もう改めなさい」
「そっ、そんな、あんまりでございます。ゼルネアス様だって、人間め相手に大層お気を痛められたばかりではありませんか」
「しかし、彼等がいなければ、私が再び目覚める事はありませんでした」
「それは……」
「彼等の中にも、理解し合える者はいるのですよ」
「ど、どちらにせよ、人間のエゴイズムではありませんか。奴らは卑怯で気まぐれです。また何をしでかすか、分かったものではありません」
「それは、我らとて同じではありませんか?」
「え?」
「過去の私や、過去の者達と創り上げた正義……エゴイズムとやらが無ければ、彼の様な哀れな者を生む結果にはならなかったのではないですか?」
「そんな……。それは、関係無いのではないでしょうか。今のゼルネアス様が、お気になさることではありません」
「ありがとうございます、気を遣って下さって。しかしそんなあなたの主張も、彼からすればきっと随分と利己的で傲慢な意見の一つなのかもしれないのですよ」
「……」
「……もう、この話は止めにしましょう」
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