夏に潜む影
59.「……いいだろ別に。なんでも」
「えぇー! なになにぃー? きーにーなーるぅー!」
フウロが俺に近づいて、目を合わせようとしてくる。
うわぁ。想像以上にめんどくせーし、しつけーぞ…。
「探し物だよ、探し物」
ミツキの、帰る方法だ。
まあ、はっきりとこいつらに教えるつもりは無い。
さらっと返して、さらっと流そう。
「探し物? ……ふぅん。どんなものなの?」
「分かんねぇよ……。それも含めて、探してる」
ミツキの世界がどんなのかも分かんねぇし。
その方法だって、正直、実際あるのかさえ…分かんねぇからな。
「そっかぁ。どこにあるのかは? それも分かんないの?」
「ああ。……そうだな」
そんなの知ってたら、とっくにそこに向かってる。
「……そう」
……そう。
「それってさ」
「……?」
「ミツキちゃんの探し物? それとも、陽くんの探し物?」
それとも、二人の探し物かな?
そう言って、フウロは俺に笑顔を向けた。
アーティは黙ったまま、俺たちを眺めている。
誰の、探し物か…?
探しているのは、誰か、だって……?
そんなの、そんなの……。
「ミツキが、探してる物だ。すげぇ、大事なもので……。でも、俺の探し物じゃない。俺は、探してない……」
俺は、見つからなくて、いいと思ってる。
そう言おうとして、はっと気づいた。
俺、何を考えて……。
「そっかぁ! じゃあ、ミツキちゃんの探し物を、陽くんが一緒に探してあげてるんだねぇ!」
偉いんだねぇ!
フウロはまた、そう言って俺に笑った。
偉い……? 俺が?
「探し物、見つかるといいね!」
フウロの笑った顔が、怖い。
屈託のない、無邪気な笑顔。
こんなどろどろでぐちゃぐちゃした俺を見て、なんでそんな風に言えるんだよ。
どうして、そんな顔ができるんだよ。
気持ちが、悪い……。
……誰が?
フウロ?
いや、違う。
……俺、か。
*****
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