夏に映る姿

 69.

突然背後から聴こえて来た声。
振り返る間もなく、俺は全速力で駆け出した。
視界の端に見えたのは、俺の腰ほどの身長しかない、白いマントを羽織った様な姿だった。
いや、分からない。
正直に言うと、全然よく見えなかった。
でも、そんなことはどうでもいい。
俺の、あの名前を知っているのはあいつらしかいない。
あいつらしか、いないんだから。

くそ、もう追い付かれたのか。
なんでバレたんだ。
どうして俺だと分かったんだ。
あれから一度も、本当の姿になっていないのに。
ミツキにも、見せたことが無いのに。
どうして。
どうして。

俺は急いで建物の陰に入り込み、チョロネコの姿になった。
どこにでもいる、人間の足元にも隠れられそうな小さなポケモン。
街中を転々と移動し、隠れ、また移動してを繰り返して、そいつの目を眩まそう。

元々暗かった空が、いよいよ真っ黒になり始める。
前方の道が、影に包まれる。
俺も今から、この闇に溶けるのか。
いつも思う。
ああ、日没だ、と思ったときには、もう遅いんだ。


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