夏の嵐の夜
79.この事件以降、俺たちの中では暗黙のルールが出来た。
ポケモン達の、自由と権利。
ポケモンと人間との間にある、絆と束縛を、はき違えてはならない。
まるで奴らの言っていたポケモンの解放を、イッシュの人々自らが、再び体現しているかの様だった。
でも、これがその後のイッシュの現状だったんだ。
社会ってのは恐ろしいもので、もうこの地方はそういう空気になってしまった。
しばらくテレビでは人間とポケモンの関係性についての内容を取り上げたテレビ番組が増えたし、プラズマ団の真似事の様な奉仕団体も出てきた。
流されやすいもんなんだ、人間ってのは。
それまでは皆、何も考えずに、仲良く過ごしてたっていうのに。
そんな、人間とポケモンとの関係がぎくしゃくとし始めてから二年後、再び事件は起こった。
逃亡したゲーチスが再び団員を集め、プラズマ団を再結成したのだ。
今度の目的は、まあ、分かり易かった。
カゴメタウン付近で小さく伝わっている昔話に登場する、キュレムというポケモンを遣い、今度は力によるイッシュ、そして世界の直接的支配を目論んでいたらしい。
何というか、ここまで単純で規模がでかいと、本当にすげぇのかただのバカなのか、よく分かんなくなる。
けれど、この事件はあの頃のイッシュの人々を、色濃く具現化したものだったと、俺は強く思う。
後々マスコミを通じて知る事になったのだが、この時、プラズマ団は内部分裂を起こしていたらしい。
ゲーチス率いる完全なる悪の餌食となったプラズマ団と、今までの事を悔い改めて奪ってきたポケモンを保護する活動を始めた、元プラズマ団。
どちらも、ゲーチスという悪のきっかけさえ無ければ、この様なことにはならなかった。
今まで通り、何も考えず、楽しく、ポケモン達と暮らせていたはずだ。
それは、俺たちと何ら変わりは無い。
結局は俺たちも一緒なんだ。
考えるように、なってしまった。
俺たち人間と、ポケモンの関係性について、深く、深く考えるようになってしまった。
不変であると信じていた何かを、あいつは、ゲーチスは、壊していった。
イッシュ全土に、言葉の毒をばら撒いて。
俺たちは今もなお、ゲーチスの毒に犯され続けている。
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